【000】<見本>「百症例式 胃の拡大内視鏡×病理対比アトラス」Web問題と解答(濱本-1)

 

<問題>

Q1:体上部大彎後壁よりの病変です。通常内視鏡像について、背景粘膜・色調・肉眼型・境界・組織型を読影してください。

N1 N2

 

 

 

背景粘膜は萎縮性変化に乏しく黒点が点在している(プロトンポンプ阻害薬内服中)。本例は、便中ピロリ抗原は陰性、血中ピロリ抗体値は<3U/mLであった。 病変は褪色〜黄白色調で全体に粘膜下腫瘍様の隆起を呈するIIa病変であり、病変内では拡張した血管を認めている。病変境界は色調で追える。 隆起性病変であることと、その色調と合わせて組織型は分化型癌や、粘膜下腫瘍様隆起を呈することから胃底腺型胃癌などが予想される。なお鑑別は色調から未分化型癌、悪性リンパ腫、限局性萎縮性変化などを考え、拡大内視鏡診断を行う。

 

 

Q2:NBI拡大内視鏡像について、表面構造・血管構造を読影してください。また、最終診断を行ってください。

N3 N4

 

 

 

NBI観察で背景粘膜は八木分類B2相当の細かな円形の腺開口部・pit様構造を認めている。粘膜下腫瘍様隆起を呈すIIaの範囲で、拡張した微小血管を認め、色調の変化を認めている。中央の陥凹部に拡張した異型の乏しい血管を認め、そこから分岐する細かく異型の乏しい血管を認めている。陥凹内はWhiteZone(WZ)の視認性が一部乏しくなっており、大型な絨毛状構造を呈しているが、個々のWZの形状や、WZの幅が均一で整っている。陥凹周囲の粘膜下腫瘍様隆起部は背景粘膜と差のない、細かな円形の腺開口部、pit様構造を認め、厳密にDemarcation Lineを引くことがやや難しい。
水浸下でのFull ZoomのNBI拡大観察でも走行不整や、径の不整に乏しい拡張血管・分岐血管を認めており、破壊・断裂も乏しくWavy micro vesselsやCorkscrew vesselsなどの未分化型癌を示唆する血管はない。陥凹の中央部でWZは視認されず、異型に乏しい血管を認めるのみであった。
以上から最終診断は「胃底腺胃癌」と考えられる。

 


 

 

 

 

胃底腺型胃癌の病理組織構築とNBI拡大観察の所見が合致した1例

 

B1

 

切片6とNBI中拡大像との対比:

B2

胃底腺型胃癌が圧排性に粘膜下層に浸潤しており、粘膜筋板は病変中央で途切れている。胃底腺は病変の辺縁まで薄く腫瘍表層に分布している。

 

切片6とNBI強拡大像との対比:

B3

中央の拡張血管は6切片表層の血管と一致する。
浅部に胃底腺を認めず腺窩上皮の直下に胃底腺型胃癌の腫瘍塊が存在している腫瘍中央部はNBI拡大観察でもWZが視認されにくかったり、大型な絨毛状構造を呈している部分であった。
腫瘍辺縁部は浅部に胃底腺を認めておりNBI拡大観察でも腺開口部を認めていた所見と合致すると考えられる。

 

最終病理診断:

 胃底腺型胃癌, Gastric adenocarcinoma of fundic gland type, chief cell dominant ; U, Less-Post, Type 0-Ⅱa+Ⅱc, 7x7mm, pT1b1(SM; 400μm), med, INFa, UL0, Ly0, V0, pHM0, pVM0

 

症例のポイント:

萎縮に乏しい背景胃粘膜の中の褪色域は、胃底腺型胃癌をはじめとした悪性腫瘍の可能性がある。慎重な精査・方針決定が必要であり、狭帯域光拡大内視鏡観察がその一助となる。

安定して病変の強拡大観察までできるよう、平素から拡大内視鏡に親しみ、習熟が必要である。

 

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