第3回 難治性便秘の落とし穴-本当に便が溜まっているのか?

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大量の刺激性下剤を服用しながらも少量の便しか出ず、常に強い便意と残便感を訴える患者が外来を受診することがあります。

薬局で大量に購入したセンノシドなどのアントラキノン系下剤やビサコジルや、複数の医療機関で処方された刺激性下剤を乱用しているケースでは、本当に便が溜まっているのか、エコーで真相を探る必要があります。

このような症例で、もしエコーで大量の便が確認できれば、それは慢性便秘に他なりません。しかし、便がほとんど見当たらない場合、いわゆる「下剤乱用症候群」が強く疑われます。


下剤乱用症候群とは何か?

下剤乱用症候群は、当初は常用量で刺激性下剤を使用していたものが、「排便がない不安」や「体重増加への恐怖」から徐々に服用量が増加し、最終的に数十倍量を常習してしまう病態です。

この状態では、刺激性下剤による腸管への慢性的な刺激が、常に便意を感じさせる原因となります。

「便が完全に出ていない、残便感がある」という強い訴えが特徴で、排出されるのは水様便です。


POCUSが解き明かした50代女性の真相

神経質そうな痩せ型の50代女性の症例をご紹介します。

10代から便秘に悩み、市販の刺激性下剤を長期間にわたり服用。最近では、コーラック30錠を毎日服用していたといいます。

1カ月ほど前から残便感が強まり、嘔吐や冷汗を伴う心窩部痛まで出現したため、当院を受診しました。

「毎日、少量の水様便が出る」との訴えでしたが、外来POCUSでは上行結腸から下行結腸にかけて少量の軟便とガスしか認められませんでした。さらに、大腸全体に粘膜・粘膜下層がびまん性に肥厚し、特に直腸での肥厚が顕著でした(Fig.1)。

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