全国症例ぶらり旅(3)―中国・四川編

 

全国症例ぶらり旅(3)―中国・四川編

旅人:野中 康一(埼玉医科大学国際医療センター 消化器内科)

 

今、四川省の空港のラウンジで遅延した帰国の便を一人で待っている。

 

今回ぶらり旅もワールドワイドにしてみることにした(笑)。

 

 

四川人民病院に内視鏡診断の指導にやってきたのだが、正直びびった…。

 

指導???

 

何に“びびった”かというと、四川人民病院(https://www.samsph.com/)の内視鏡診断のレベルの高さにだ。

 

 

中でも、ひときわレベルの高い内視鏡医が二人いた。信じられないレベルだ。

 

6年前くらいに中国に講演で呼ばれるようになった当時では信じられないレベルの高さである。

 

彼らのお名前は、胡暁医師肖迅医師である。

 

左から、肖迅医師(四川人民病院)、胡暁医師(四川人民病院)、野中康一、宮健医師(大連医科大学第一附属医院)

 

GIF-H290Zに黒フード装着して検査を開始するのだが、まずフード先端長をフルズームで横幅が4.75mmに調整して検査を開始している。

 

咽頭も短時間でNBI観察を行い、食道もWLIとNBIで詳細に観察している。数ミリのbrownish areaも検出して拡大観察している。

 

胃に入ると、京都分類を基にしてピロリの感染状態を判断し、検査にかける時間の必要性を論じている。指導することなんて何もない…。

 

果たして、私が今回来た意味はあったのだろうか?

 

 

検査後に、彼らの採点をしてフィードバックするのだが、指導なんてほぼ必要なかった。

 

われわれ日本人もうかうかしていられないレベルである。

 

あえて指導するとすれば、NBIの設定がきちんとされていなかったことと、中国の先生方にやたら酢酸を撒くのが流行っているようだが、日本ではそんなにやられていないということぐらいであった。

 

 

控室に戻ると胡医師の本棚には日本語のたくさんの教科書が並べられていた。中国語版の黄色の「モテ本」はすりきれてボロボロになっていた。おそらく何回も読んだのだろう。

 

驚くべきは、まだ翻訳されていない日本語のピンクの「モテ本2」も並んでいたことだ。日本で購入されたらしい。

 

 

中国語に翻訳された、小山恒男先生、八尾建史先生、八木一芳先生(五十音順)の教科書も当然のことながら本棚に陳列され、読み込まれた感じが半端なかった。

 

彼が「この三つの診断学は、中国の三国志みたいなもんですよね!」と笑いながら言ってきた。

 

誰(どの日本人)がそんなことを彼に伝えたのだろうか?? コメントに困った…。

 

「三国志を読んだことがないので、よく分からない。」とだけ返事をして、会話を次に移した。

 

 

今回、四川省で楽しみにしていたのは、もちろん「麻婆豆腐」ともう一つは「モテ本」の中国語への翻訳者である大連医科大学第一附属医院(http://www.dmu-1.com/)の宮健医師と初対面できるということであった。

 

宮健医師は日本語も上手で、内視鏡の知識も豊富だった。とにかく謙虚で感じの良い先生であった。香川に留学の経験があるということで、ときに「みや たけし」と間違えられたこともあったらしい。今後、日本の学会場で彼を見かけたら「ぐう けん先生」と声を掛けてあげていただきたい(笑)。

 

 

さて、本筋に戻すが、胡医師に最近勉強になった症例をぜひ一例、「ぶらり旅」に出してくださいとお願いしてきた(ぐう けん先生にも協力を依頼しました)。

 

どのような症例をどのような美しい写真で提示してくださるか楽しみである。

 

 

われわれ日本人も負けないように勉強しないと、数年後には彼らに日本人若手内視鏡医の指導をお願いしなければいけなくなるだろう。

 

「モテ本」の表紙のイラストが胡先生にチェンジされないことを祈るばかりである…(笑)。

 

 

 

 

 

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