大腸検査の代表格 ― 大腸内視鏡検査
大腸検査の代表的な方法は、大腸内視鏡検査です。
腸管洗浄剤を服用して大腸を空にしたうえで、内視鏡を挿入し、粘膜面を直接観察します。
丁寧に観察することで微小な病変も検出でき、1 cm程度までのポリープであればその場で切除(ポリペクトミー)が可能です(Fig.1)。

Fig.1 大腸ポリペクトミー(cold snare polypectomy)の実際.
a:上行結腸に5㎜大の腺腫性ポリープを認める。(NBI併用弱拡大観察)

b:ポリペクトミースネアをポリープにかけ、絞扼して切除する 。
c:切除後は自然止血が得られている。
一方で、検査前には1.5〜2リットル程度の腸管洗浄剤を服用する必要があり、受検者の負担は大きいのが現状です。
また、内視鏡医の技量によりますが、内視鏡操作に伴う苦痛を伴うことがあります(ただし鎮静剤の使用により軽減可能です)。
新たな大腸検査ー大腸CT(CTコロノグラフィ)
大腸CT(CTコロノグラフィ)は、大腸を炭酸ガスで拡張した状態でCT撮影を行い、得られたデータを三次元的に再構成して観察する検査です。
実際の内視鏡に類似した仮想内視鏡像(バーチャル内視鏡)を表示できるのが特徴です。
Fig.2に筆者が実際に検査を受けた大腸CTと内視鏡の写真を提示します。

Fig.2 大腸ポリープの大腸CT画像と大腸内視鏡画像.(Fig.1と同一症例)
a:仮想内視鏡像で上行結腸に5㎜大のポリープを認める(矢印)。

b:大腸内視鏡でも同様のポリープを認め、その後ポリペクトミーにより切除された。
大腸CTの最大の利点は、腸管洗浄剤の量が少なくて済むことです。
内視鏡の半分以下の服用量で済み、撮影自体は数分で完了します。
炭酸ガスによる腸管拡張も苦痛がほとんどなく、鎮静剤を必要としません。
■ タギングとは
大腸CTでは、腸内に残る液体や便が画像診断の妨げになることがあります。
そこで、あらかじめCTで白く(高吸収に)映る専用の造影剤を服用し、便や残液を区別しやすくする手法を「タギング」と呼びます(Fig.3)。

Fig. 3 タギングの実際.
a:仮想内視鏡像で隆起を認め、ポリープを疑う。
b:断面を見ると内部は高吸収であり、タギング製剤で標識された便であることがわかる。
この手法により、大腸を完全に空にする必要がなくなり、受検者の負担を大幅に軽減できます。
■ 大腸CTの診断精度
大腸CTは、内視鏡のように粘膜を直接観察する検査ではなく、大腸の形状(凹凸)を画像化する検査です。そのため、非常に小さな病変や平坦な病変、色調変化のみの病変は検出が困難です。
しかし、6 mm以上のポリープであれば約9割の検出率が報告されており1)、臨床的に重要な病変はほぼ検出可能です。
また、内視鏡では観察しづらいヒダの裏側の病変も、CTでは検出可能です(Fig.4)。

Fig. 4 大腸CTで発見されたヒダ裏病変.
a:直腸の屈曲部に平坦な隆起を認める(矢印)。内視鏡では死角になりやすい場所である。

b:仮想内視鏡では、中心部に陥凹を伴った平坦な隆起である。

c:実際の内視鏡では見えにくく、鉗子でヒダを押さえることで視認された。
大腸CT vs. 大腸内視鏡 ― どちらがよい検査か?
結論として、どちらも優れた検査です。むしろ、相互に補完し合う関係にあります。
大腸内視鏡は診断精度が極めて高く、同時に治療も可能な検査です。
一方で、前処置や侵襲性の面で受検者の負担が大きいという欠点があります。
これに対し、大腸CTは一定の診断精度を維持しながら、負担が少なく、苦痛もほとんどない検査です。
特に内視鏡検査に抵抗のある人には、大腸CTが有力な選択肢となります。
両者の特性を理解し、個々の状況に応じて検査を選択することが理想です。
文献
1)Nagata K, et al : Accuracy of CT Colonography for Detection of Polypoid and Nonpolypoid Neoplasia by Gastroenterologists and Radiologists: A Nationwide Multicenter Study in Japan. Am J Gastroenterol. 112: 163-171, 2017