書評(上部消化管 内視鏡診断 マル秘ノート)
木村 晴(厚生中央病院 消化器内科)
まず始めに、私の様な若輩者が“書評”などという大それた行為をする事をお許し願いたい。縁あって“上部消化管 内視鏡診断マル秘ノート”の“書評”を書かせていただくこととなった。
私はNTT東日本関東病院の内視鏡特別研修という名目で内視鏡室に通って5年がたつ。通称“モテ本”の筆頭著者である野中康一先生がNTT東日本関東病院在籍中から、早朝カンファランスを始め多岐に亘り大変お世話になっている。野中先生が内視鏡指南本を出されると耳にした時、私の頭に真っ先に思い浮かんだのは「門外不出の内容が世に出てしまう、、、」であった。もちろん野中先生が本を出されるという事を応援する立場に揺るぎはない。しかし、早朝カンファランスで3年以上に渡り教えていただいた自分としては、その知識をカンファランスに出ていない世の中の有象無象に知られる事が悔しかった。それくらい、私は“野中先生の知識と指導力”に自信があった。カンファランスに出席して得られた知識はそれほどに即戦力になる内容であることを自身で知っていた。
実際“モテ本”が出版されてみると、やはり内容は御高名な先人たちのマスターベーション的なアトラス本などとは明らかに一線を画したものであった。挫折しがちな複雑な表現の羅列・復唱ではなく、各解説の後に“モテpoint!”として要点をまとめて解説するなど、知識を得たい若手内視鏡医の目線を理解した分かりやすい説明であり、すぐに臨床に反映できる最新のそして最高の指南本である。“モテる”という表現は先人たちには理解し難いであろうが、若手の率直な希望だと私は思う。異性にモテたい(だけ)ではなく、他者からの評価として“モテる”という表現は非常に意欲をそそる言葉であると思う。実際私も野中先生の御指導により、またモテ本の熟読により内視鏡の向こう側の景色が変わった。検査中に見る部位・見方・考え方・診断までの筋道の立て方、すべてが変わった。ついに転がし続けていた鉛筆を捨てた。。。そしてそれをわが物顔でさらなる若手医師への教育につなげる。結果、周囲の医師からも若手医師からもモテている。間違いなく以前と違うのである。
水を溜める事が困難な部位に対するEUSの方法として紹介された“ソフトバルーン法(P.132~)”の説明に至っては、分かりやすいように写真が掲載されているが、使用するアイテムに合わせてきれいな女性の手で解説されている辺りはさすがである。さすがとしか言いようがない。
最後に、この指南本の新しい取り組みである“参考文献へのQRコード”について感謝をつづりたい。申し訳程度に参考文献を最後に記載するのが業界の常であろうが、読者目線での“文献への近道”として第一歩の手間まで省いてくれるこの仕組みは斬新であり、非常にありがたいと思う。これも著者たちの読者目線があればこその発想であると思う。只々脱帽である。
次回作として、やはり“下部消化管のモテ本”がいつ出るのかが気になるところである。
平成29年2月
木村 晴
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