Dr. 平澤欣吾の「こだわらない」EMR・ESD[Web動画付]
ーESD時代のEMR論とナイフ別ESD攻略法
【特別インタビュー】
「こだわらないEMR・ESD」はなぜ生まれたのか?
――「こだわらないEMR・ESD」、ついに完成しました。先生と何度も打ち合わせを重ねたものが形になり、担当者としても喜びひとしおです。
平澤 自分で言うのもなんですが、すごい一冊になりました(笑)。
――そういえば、今さらですが、なぜ先生が「こだわらない内視鏡治療」をされているかという話は、これまでお伺いしていませんでした。何か具体的なきっかけはあったんでしょうか?
平澤 はい、実は契機となった症例があるんです。僕が最初に始めたのは胃のESDで、その時使用しているのはITKnife 1本だけでした。
とても記憶に残っているんですが、若年の患者さんで、20mmくらいの胃癌を切除し終えるのに8時間ぐらいかかったんですよ。がんセンターから帰ってきた2008年くらいかな。
――えっ、8時間!?
平澤 13時ぐらいに始めて、終わったのが21時ぐらいでした。開始3時間後ぐらいからご家族が内視鏡室の前でずっと待たれていて。とにかく早く終わらせないと安全じゃないなと感じたんです。書籍にも書いていますが、これは「患者さんの体力」という意味でもそうだし、「術者の体力」という意味でもです。泥仕合になるとどんどんパフォーマンスが悪くなってくる。
――取りづらい部位にあって、予想外に時間がかかったんでしょうか?
平澤 出血が止められなかったんです。切ったら血が出て、切ったら血が出て。体下部後壁の病変だったから今考えれば出血しやすいのは当たり前なんですけどね。当時は「小さいから苦戦しないだろう」と思っていました。
そういう固定観念を持っていると痛い目に遭うことがわかり、フル装備、つまり本書でいう「ひきだし」をいっぱい作ろうってなったんです。
――「ひきだし」があれば、どんなシチュエーションにも対応できるだろう、と。
平澤 もうひとつは、当時新しいデバイスや高周波装置がどんどん開発されて、例えばクリップ牽引のようなストラテジーも報告されていたので、「ひきだし」を増やしやすかったのもあるでしょうね。僕はそういう新しい方法が出始めたのと同時に育ってきた世代なんです。新しい方法を聞いては試してみて、取捨選択した結果として「ひきだし」が増えていきました。
――トライアルアンドエラーした結果なんですね。
平澤 そうですね。誰かがやっているからそれが「よい」ではなく、自分で使ってみて残ったのが今ある「ひきだし」です。ただし、念のため言っておくと、「一つのデバイスで完結できる」のが悪いと言っているわけではありません。それができればベストではあります。
――ESDを極められていく中で、EMRを見直されたきっかけもあるんですか?
平澤 一つには、全部ESDでやったらキリがないということです。EMRで切除できれば外来でほとんど終わっちゃうので、患者さんも楽ですし。
もう一つは、EMRでもESDと変わらないくらいきれいに一括切除できたことに、内視鏡医として喜びを感じたんですよね。これはESDを極めようと鍛錬をつんでいなかったら味わえなかったかもしれません。「簡単な手技をいかに効率よく、完成度高く」というところに原点回帰したんです。
――しかも、ラズベリー胃癌のように、EMRが適している病変もあった。
平澤 そうそう。でも、皆最初は「なんでもかんでもESD」という時期が来ます。その先に、「これは小さいけど絶対浮かないからESDだ」「これは大きいけど多分EMRでいけそう」といったストラテジーが見えてくるはずです。一番大事なのは「安全に、早く、確実に」ですから。
――最後に、今内視鏡治療を学んでいる若い先生方へメッセージをお願いします。
平澤 僕が「ひきだし」を作っていく過程は先ほどお話しましたが、今の時代はデバイスがたくさんあって、逆に言うと「選択肢がありすぎて絞れない」かもしれません。もしそういった悩みがある場合は、何かメインデバイスを1本作っておいて、壁にぶつかったときに別のデバイスを試してみるのがよいでしょう。初めから「あれもやってみよう、これもやってみよう」だと、何かが本当によいかわからないですから。
――うまくいかなったときこそ、新しい「ひきだし」を増やすチャンス。
平澤 そうそう。ただ、増やすにしても、使えない「ひきだし」がいっぱいあっても意味ないですからね。うまくいかなかったシチュエーションで『なぜうまくいかなかったんだろう?』『何が必要だったんだろう?』と考えることで、使える「ひきだし」が増えると思います。
――本日は貴重なお話をありがとうございました。

Dr. 平澤欣吾の「こだわらない」EMR・ESD[Web動画付]
ーESD時代のEMR論とナイフ別ESD攻略法
定価:8,800円(税込)、192頁、B5判、並製
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