「モテ本2」の「一対一対応」の単元を実際にやってみた!!! 野中 康一、菓 裕貴
「モテ本2」の「一対一対応」の単元を実際にやってみた!!!
野中 康一(のなか こういち) 埼玉医科大学国際医療センター 消化器内科
菓 裕貴(くるみ ひろき) 埼玉医科大学国際医療センター 消化器内科
(担当:Wall-E)
野中:
まず一言、私の標本の写真撮影、切り出し等の師匠の一人である仙台厚生病院の名和田先生に一言物申す!!!
“「モテ本2」に書いてある、名和田先生のやり方をマネしたけど、全くうまくいきませんでしたよーー。金返せー。”
こういうクレーマー、読者が一番見苦しいし、対応が困る。。。。。
まさか、自分自身がこのクレーマーになってしまうとは想像だにしていなかった。
こうなってしまった経緯を説明しよう。
恥ずかしながら、私自身も拡大研究会で症例提示するようなきちんとした1対1対応の症例提示を準備するのは苦手である。できれば、今後も永遠にやりたくない。。。。。。
しかしながら、そうもいかなくなった。
鳥取大学から国内留学で磯本教授の医局の若手医師一人をお預かりすることになった。
菓(くるみ)医師。 8年目の医師である。
名前が面倒くさい。まず、くるみと打って、変換しても「菓」は出てこない(怒)。
毎回毎回、「菓子」と打って、「子」を削除しているわけである。
この時点でなぜ彼を受け入れてしまったのか少し後悔してしまう。。。。。
ただ、そのイライラを払拭するくらい真面目で、よく働く男である。さすが、鳥取の期待の星として磯本先生に選ばれただけの人物である。
彼に拡大研究会での症例提示の準備を指示した。もちろん自分も一緒に勉強しなおそうと思い、恥を捨てて一緒に一から勉強しようと思った。
とりあえず、「モテ本2」の名和田先生の「モテる! 症例発表で会場を沸かせるスライドの作り方」の単元を熟読して、全く同じようにやるようにと伝えた。当然、名和田先生の推奨する一眼レフのカメラを医局費で購入していただく良沢教授にお願いするところからの開始である。
良沢教授は器が半端ない。通常胆膵ご専門の上司であれば、消化管の医師は冷遇されても仕方ない。。。。しかし当院はむしろ真逆である。
先日のJDDWで教授と夜遅くまで居酒屋で飲んでいたメンバーは全員消化管の医師であった。ちなみに、私と長年連れ添ってきた、某た●ま医師は、先日のJDDWのランチョンで私の講演と教授のランチョンがブッキングして、医局員がどちらに誰が行くべきか悩んでいるというのにも関わらず、私の講演が聞き飽きたとのことで教授のランチョンを選んだらしい。
要するに、良沢グループの結束力は半端ない(笑)。飲み会での盛り上がりも半端ない(笑)。
話を本筋に戻すが、良沢教授からカメラ購入の許可をいただいた。
Nikon社製のD5600というカメラとAF-D DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8Gというレンズで価格がおおよそ93,000円であった。
7日後にカメラが届いた。不思議なことに、ただカメラを購入しただけなのに、もう完璧だ。と思ってしまった。
しかし、ここからが笑っちゃうストーリーの開幕である。
正直、かなりお恥ずかしい内容であり、公にするのは自分たちの実力のなさをさらしてしまうことになってします。モテなくなる。。。。。。
書くのも恥ずかしくなるので、ここから先は胡桃先生(変換でこれがでやすいのでこれでいいや)に経過を報告してもらうことにしよう。
菓(くるみ):
こんにちは!
2018年4月から埼玉医科大学国際医療センターに国内留学中の菓(くるみ)裕貴です。
あのモテ本の著者、野中康一先生のもとで、どうしても内視鏡診断学と治療の勉強がしたくて、鳥取からはるばる埼玉にやって来ました。
今回は私が埼玉に赴任してから起きた、あるドタバタ劇についてご報告したいと思います。
赤面するような恥ずかしい部分もありますが、私と同じように検体撮影に不慣れな若手内視鏡医が、内視鏡室の片隅で悩んでいるかもしれませんので、詳細に報告したいと思います。
2018年4月、野中先生より拡大研究会での症例提示の機会をいただきました。
まず野中先生より、
“仙台厚生病院の名和田義高先生の1対1対応を当院でも取り入れたい。”
“「モテ本2」の「モテる! 症例発表で会場を沸かせるスライドの作り方」を熟読して、
同じカメラをそろえてほしい。値段とか調べてみて。“
と指示がありました。
当院に赴任してすぐの私にとって、医局のお金で買い物をするという一大イベントでした。
可能な限り安く迅速に!
そう意気込んでAmazon、楽天、近隣の家電量販店を見て回り、価格.comが一番安いことを確認しました。
カメラとレンズで92,573円。
調べるのに3日間かかりました。。
さっそく注文し、7日後にカメラが届きました。
カッコいい。正直、カメラが届いただけで、もう「モテる」思ってしまいました。
皆さんはカメラにお詳しいでしょうか?
ちなみに私の上司の某内視鏡医は職業を聞かれた時に「カメラマン」と答えるそうです。
妙にカッコよく感じ、私も美容院で職業を聞かれた際に、ここぞとばかりに“ああ、僕カメラマンなんですよね~。”と言ってみました。
私の日頃の行いが災いしたのでしょうか、その美容師さんはカメラにとてもお詳しいようでして、髪を切っている間ずっとカメラについて質問され続けました。
もうその美容院には行っておりません。
つまり私はカメラがド素人ということです。
カメラが届いたところで、テンションが高くなり、色々なものを撮影して拡大しました。
(原画)
(拡大図)
(拡大図)
思った通りのキレイな写真が撮影できました。
“すごくキレイ。”“やっぱり、いいカメラは違うね。”
そんな盛り上がった雰囲気のまま、「モテ本2」の219-225ページを参考に、さっそく胃ESD後の切除検体を撮影してみました!
ピオクタニン染色…垂らしてみたらいいのかな?
(原画)
“うーん…ここから拡大したら、腺管構造が見えてくるんですかね。”
(拡大図)
…なに、、、これ??
さっきまでの盛り上がりが嘘のように場は静まり返っていました。
カメラの設定の問題かと思い、説明書を片手に設定を変更しながら撮影を続けました。
(原画)
(拡大図)
この放送事故のような写真が、当日の最もよく撮れた一枚です。
ずっとある、この上の毛みたいなのはなんでしょうか。。。
“えーと、くるみ君、カメラの設定はあってるのかな??(野中)”
このままではいけないと思い、カメラ素人の私は、カメラの説明書や本で勉強を始めました。
ちなみにカメラの説明書は442ページあります。
しかし色々な設定を試しましたが満足のいく写真は撮影できませんでした。
そんなある日、薄暗い部屋の片隅でコソコソと検体の写真撮影をしていたところ、たまたま通りかかった当院病理診断科のN先生が“ちゃんとした光を当てないと良い写真なんて撮れないよ。”と教えてくださいました。
“えっ、そうなの??”
そこで病理の部屋へ行ってみたところ、豪華なカメラ台でパシャパシャと綺麗な写真を撮影しておりました。
調べてみると、LEDランプの均一照射が可能な標本撮影専用のカメラ台でした。
手続中でしたが、すぐに、株式会社エス・エフ・シーの営業ご担当様が、画像の使用許可をくださいました(ありがとうございます。 Wall-E)!
ということで ↓↓↓
C-DL-LED:276,000円 C型専用台:98,000円 (カタログは「こちら」 ※PDFが開きます。)
画像提供:株式会社エス・エフ・シ―(製品紹介ページ:http://www.sfc-tokyo.com/product/equipment/c.html)
しかし高すぎる。。。。。もうカメラで10万円使っている。。。。さらに40万。。。
絶対に無理だと思いましたが、野中先生から良沢教授にご相談いただき、翌日には購入許可をいただきました。
良沢教授、本当にありがとうございます。
その14日後、標本撮影装置が届きました。
R2-D2みたいでカッコいい!!
ひ、光った!!
これで絶対にキレイな写真が撮れると確信しました(というより、願っていました)。
”これは、凄いなー。”
みんなの興奮も最高潮に達していました。
さっそく胃ESDの切除検体を撮影してみました。
少なくとも5秒は、その場の空気が固まったと思います。
沈黙の後、、、
“き、、、きれい、、、腺管見えますね。。。。”“ややっ、やっぱり光の影響だったんだ!”“こ、、、これで拡大研究会いけるね。”
言葉と裏腹に表情は硬かったです。
こんな大金をはたいて、今更きれいに撮れなかったと言えるでしょうか、いや言えません(反語)。
この写真のまま、拡大研究会の当日を迎えました。
ただ当日、何となくこの写真を出すのは止めました。
おそらく、野生の勘が働いたのだと思います。。。。
ところで拡大研究会の当日、名和田先生のご講演を拝聴する機会がありました。
名和田先生のご講演は本当に素晴らしかったです。
次々に出てくる写真の美しさに、会場ではどよめきが起こっていました。
逆に私たちの心のなかは、ざわついていました。
正直、とても同じカメラで撮影したとは思えませんでした。。。
拡大研究会のあと、八重洲の地下一階のとある鉄板焼き屋さんで懇親会が開かれました。
飲み放題付きで1万円、野中先生の大好きな焼酎も、もちろん取り揃えております。
研究会についてみなさんでお酒を酌み交わしながら楽しく談笑していた時のことです、
野中先生が突然名和田先生の横に行き“先生の言うとおり同じカメラを買ったのに、
全然うまく撮れないじゃないですか~。“と、笑顔で柔らかなクレームをつけられていました。
名和田先生は“いったい、どういう風に撮られてるんですか?”とさわやかな笑顔で対応されておりました。それからは、遠くから見ていた私にも、はっきりとわかるぐらい野中先生の顔色がどんどんと曇りだし、5分後には店の隅で焼酎の水割りを一気飲みしていました。
野中先生、私のせいです。すいません。
結論から言います! キレイな写真が撮れなかった原因は、われわれの検体の染色方法が違うということでした。
これが名和田先生に教わってから病院で実際に撮影した写真です。
モテそう。。。
とても簡単に、キレイな写真が撮影できました。
カメラは悪くありません。名和田先生も悪くありません。
モテない理由は私たちにあったのです。私たちの染色手順が間違っていたからなのです。
ただ、同じような悩みを抱える若手医師が、もしかしたら他にもいるかもしれません。
今回、名和田先生に教えていただいた最大のポイントである検体の染色方法を以下に記載します。
【モテPoint!】
①検体を染色するタイミングは固定後。
②検体が浸かるぐらいのピオクタニン溶液と、生理食塩水を準備。
(当院では0.05%ピオクタニン溶液を1/2希釈し0.025%ピオクタニン溶液を使用。)
③検体を水道水で、やんわり洗浄して、粘液を落とす。
④検体をピオクタニン溶液に適度な濃さになるように漬ける。
⑤ピオクタニンを洗い流す。
(※一度、濃く染まりすぎると落とすことができないので注意!! 濃すぎるよりは薄すぎの方が、マシな写真になる。)
⑥検体を撮影するときは、水浸法で撮影する。
上記のポイントを押さえれば、後は「カメラ」と「モテ本2」さえあれば、とても簡単に会場を沸かせるキレイな写真を撮影することができます。
ちなみに当院では、ボタン一つで簡単に切り替えが可能なクローズアップモードで撮影しています。カメラの勉強は不要です。
【結論!】「モテ本2」の名和田先生の「モテる! 症例発表で会場を沸かせるスライドの作り方」を読んで同じようにやれば、とても簡単に会場を沸かせるキレイな写真を撮影することができました。
※ただ、私のように検体の染色に不慣れな若手医師は、上記のポイントを参考にしていただければと思います。
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