[書評] 日々の診療で悩んだときに解決のヒントと出合える一冊
書評者:新井 冨生(東京都健康長寿医療センター病理診断科部長)

 

日々の診療で悩んだときに解決のヒントと出合える一冊

書評者:新井 冨生(東京都健康長寿医療センター病理診断科部長)

 

 本書は,日常診療で行う内視鏡検査における“コツ”を『教科書では教えてくれない! 私の消化器内視鏡Tips』として出版された書籍の第二弾(Vol.2)である。表紙にはサブタイトルとして「とっておきの“コツ”を伝授します」とあり,帯には「実務で役立つ内視鏡の“コツ”100!+レジェンドから学ぶTips23選」と記されている。表紙を見ただけで手に取りたくなる。

 

 日常診療における“コツ”というのは,内視鏡検査に限らず医療のいろいろな分野にあると思う。評者は病理医であり,内視鏡検査については全くの素人であるが,消化管病理を専門としている関係で書評を依頼された。Vol.2の前にVol.1も拝読してみたところ,なんとそこには既に内視鏡の“コツ”129編と他科からのアドバイス&メッセージ11編が紹介されていた。Vol.2ではさらに100編の“コツ”が紹介されており,内視鏡検査の操作の難しさと奥深さを感じた。紹介されたTipsは観察,診断,治療など技術的なことに加え,心構えについてのTipsも紹介されている。心構えは指導医から直接教わることが多いが,本書を通じて会ったこともない先輩から学ぶのもよいと思う。

 

 教科書に載っていない“コツ”は,ちょっとした気遣いや意識を持つことにより実践できることが多い。一見ささいな事柄を意識することが大きな結果の違いを導くことにつながる。二宮尊徳翁の言葉に「およそ小人の常 大なることを欲して 小なることを怠り 出来難きことを憂えて 出来易きことを勤めず」というものがある。本書で紹介された“コツ”は小なることばかりではないが,出来難きことでもなさそうである。これらの“コツ”を自身のレベルに合わせて,できるところから実践していくことが大なることをめざす一番の近道ではないだろうか。

 

 さらに,本書ではレジェンドからのTipsが23編紹介されている。執筆者は病理医でも知っている消化器内視鏡のレジェンドたちである。消化器内視鏡との出合い,新しい診断法,デバイスや治療法の開発,困難に遭遇したときの対処法,自身の成長物語などをレジェンドたちが熱く語っている。その一つひとつの言葉に重みがあり,実に読み応えがある。また,読後に前向きな明るい気持ちにさせてくれる。黒背景のページに白文字で印刷されているので,暗がりの中でこっそり秘密の内容を教えてもらっているような錯覚に陥り,レジェンドたちの言葉を独り占めできる感覚も素晴らしい。

 

 本書を通読して消化器内視鏡の技術を向上させるという方法もあるだろうが,日々の診療で悩んだときに関連するページをひもとくことにより解決法のヒントを見つけるという読み方も可能である。その意味では初学者のみならず,消化器内視鏡を学ぶ多くの医師が手元に置いておきたい書物である。

 

 

 

 

医学書院HPはこちら

Amazonはこちら

こちらの記事の内容はお役に立ちましたか?