抗体をつくるリンパ球です。Bリンパ球と同義語です。
抗原による刺激に反応し、抗体を産生・分泌する抗体産生細胞(形質細胞)へ分化します。分化の過程で抗体遺伝子の再構成が生じ、個々の細胞はそれぞれ異なった抗原に反応する性質を獲得し、何百万種以上の抗原に対応するレパートリーを形成します。成熟したB細胞は、抗原受容体の役割を果たす細胞表面免疫グロブリン(surface immunoglobulin: sIg)に抗原が結合すると、T細胞による補助刺激と種々のサイトカインの作用のもとに増殖・分化し、最終的には抗体産生細胞(形質細胞)となり抗体を分泌します。
CD20やCD79aに対する抗体を用いた免疫染色によってB細胞を容易に同定できます(Fig.1)。しかし、B細胞腫瘍の治療でリツキシマブが使用されると、CD20発現がマスクされ、見かけ上CD20陰性となります。したがって、リツキシマブ使用後に採取した組織標本上でB細胞を同定する場合、必ずCD79aやPAX5を用いる必要があります (これは病理診断のピットフォールです)。
また、形質細胞はCD20を発現していないので、別のマーカーを用いて同定します。


Fig.1 胃MALTリンパ腫の病理像.
a:胃体中部後壁の粘膜は粗糙で淡茶褐色を呈し,皺襞は不規則に腫大している.同部は粘膜下腫瘤の様相を呈し,浅い潰瘍が多発している.肉眼型は表層型に分類される.
b:粘膜固有層に境界不鮮明な結節を認め,その辺縁にリンパ球が稠密している.結節形成はfollicular colonizationによる.
c:腫瘍細胞の核はわずかにくびれ,胚中心細胞に類似する.
d:形質細胞分化を反映してリンパ球の核は偏在し,Dutcher小体(黄矢印)もみられる.
e:腫瘍細胞が腺組織に基底膜側から浸潤し,リンパ上皮病巣を形成している.断片化した腺組織もみられる.
f:形質細胞分化が顕著な領域の腫瘍細胞はCD20を発現しない.
g:腫瘍細胞はCD79aを発現する.
h:免疫グロブリンκ鎖の発現率は低い.
i:ほとんどの腫瘍細胞が免疫グロブリンλ鎖を発現している.
(二村 聡,他:MALTリンパ腫.胃と腸 55:436-438,2020より転載)
