胃前庭部毛細血管拡張症(gastric antral vascular ectasia ; GAVE)は胃前庭部を中心に血管拡張を認める病態であり,
消化管出血の原因の1つとして近年注目されている.
GAVEは1953年Riderら1)によって著明な毛細血管拡張(veno-capillary ectasia)を伴う胃切除例として報告されたのが最初である.
その後,1984年にJabbariら2)が前庭部に放射状に縦走する血管拡張をwatermelon stomachと報告して以来,広く認知されるようになった.
また,前庭部にびまん性に毛細血管が拡張する病態をLeeら3)はびまん性胃前庭部毛細血管拡張症(diffuse antral vascular ectasia ; DAVE)として提唱した.
GAVE,DAVEとも毛細血管からの出血が原因で起こる貧血を呈する消化管の出血性疾患である.
両者の内視鏡所見は異なるが,病理学的には同様な所見を呈し同じ範疇の疾患と考えられ,GAVEとDAVEの両者を含めて広義のGAVEとして取り扱う場合が多い.
GAVE・DAVE患者では慢性肝疾患,慢性腎不全などの合併が多く,貧血を主訴に発見される.
GAVE・DAVEの診断には近接観察が重要であり,
GAVEでは放射状に(いわゆるwatermelon stomach,Fig. 1),DAVEではびまん性に毛細血管拡張がみられる(Fig. 2).