組織学的に小型ないし中型のB細胞 (胚中心細胞類似細胞、単球様B細胞など)が、おもに辺縁帯 (マージナルゾーン)から濾胞間領域にかけて増殖する腫瘍と定義されています (Fig.1a,b)。
腫瘍細胞は種々の程度に形質細胞分化像を示し、偏在した核のほかDutcher小体と呼ばれる核内偽封入体が観察されることがあります (Fig.1c)。そして、病巣内には必ず非腫瘍性の小型リンパ球 (おもにCD3e陽性T細胞)が混在しています。
また、腫瘍細胞が既存の胚中心に浸潤し、胚中心の構造が不明瞭となったり、消失したりすることがあります。この現象を古典的にはfollicular colonizationと表現します。
本組織型は節外臓器に好発し、消化管では粘膜固有層から粘膜下組織にかけて病巣を形成し、きわめてゆっくりと深部浸潤します。粘膜内病巣が残存している限り、程度の差はありますが、リンパ上皮病巣 (lymphoepithelial lesion:LEL)が観察されます (Fig.1d)。このLELは本病型の腫瘍細胞 (B細胞)の上皮組織内浸潤巣と定義されます。したがって、上皮内T細胞 (intraepithelial lymphocyte)とは明確に区別されなければなりません。

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Fig.1 MALT リンパ腫の組織像(a~d は対物100倍レンズで油浸撮影).
胚中心細胞に類似した中型細胞(a),明るい胞体を有する単球様中型細胞(b)が典型的な腫瘍細胞である.形質細胞分化を反映して核内にピンク色に染まる偽封入体(Dutcher 小体 : 矢印)をみる.この封入体の本体は免疫グロブリンである(c).中型細胞が腺組織内に浸潤し,リンパ上皮病変(矢印)を形成している(d).
〔二村 聡:消化管組織病理入門講座・11【全消化管】消化管に発生するリンパ腫(後編)―各病型の組織像を中心に.胃と腸 49:8,2014 より転載〕
