MSI(microsatellite instability)はマイクロサテライト領域に起きる遺伝子異常である1).
マイクロサテライトは,1~5塩基程度の塩基配列を1ユニットとする単純な繰り返し配列のことを指す1)2).
その繰り返しは,1塩基の繰り返し〔例えば(A)n〕や,2塩基の繰り返し〔(CA)n〕のことが多い.
マイクロサテライトは,ゲノム上に50,000~100,000個程度散在性にみられるが,
遺伝的には極めて不安定で,変異の好発領域としても知られている(hypermutational region)1)2).
遺伝子内の存在部位としては,多くはnon-coding領域であるが,coding領域のこともある1)2).
MSIを引き起こす代表的疾患は遺伝性非腺腫性大腸癌〔HNPCC(hereditary nonpolyposis colorectal cancer),Lynch症候群〕である.
Lynch症候群の原因遺伝子は,ミスマッチ修復遺伝子であることからMSIの原因遺伝子はミスマッチ修復遺伝子である.
hMSH2とhMLH1の変異がHNPCC全体の約90%とされ,hMSH6とhPMS2の変異がみられる例はまれである1)2).
MSIの実際例を示す(Fig. 1).
MSIは孤発性大腸癌にもみられる.その原因は,ミスマッチ修復遺伝子,特にhMLH1のメチル化である3)4).
孤発性大腸癌の分子病型は,染色体レベルの変化を特徴とするCIN(chromosomal instability)型とMSI型に大別されるが,
ほとんどは前者で,後者は5~10%程度である.
両者にみられる分子異常も異なっており,CIN型では,LOH,p53変異やaneuploidyが多いのに対して,
MSI型では,BRAF変異やCIMP(CpG islands methylation phenotype)やdiploidyが多い2).
MSIを予測する基準として,改定ベセスダ基準が広く認知されるようになった(Table 1)4).