発症前の嘔吐により噴門部近傍の消化管壁が粘膜下層までの深さで縦走に裂けることであり,吐血や下血を愁訴とする.
1929年にGeorge MalloryとSoma Weissが“飲酒者に嘔吐を繰り返し大量吐血にて死亡した4例”として初めて報告した1).
内視鏡検査の普及に伴い軽症例も含めて多数の報告例があり,裂傷の確認も容易となった.
近年では“症候群”ではなく“裂創(tear,laceration)”と表記されることが多い.
上部消化管出血例の2~6%を占め,90%が男性である.
病因
嘔吐により腹腔内圧や胃・食道内圧が急激に上昇した結果として胃噴門部周辺が過剰に伸展され,
食道胃接合部付近の粘膜に裂創を生じて出血する.
食道裂孔ヘルニアとの関連については明確なものはない.
症状
古典的三徴として (1) 飲酒,(2) 嘔吐,(3) 吐血がある.嘔吐が根本的病因であることから,
胃腸炎や乗り物酔い,妊娠悪阻による嘔吐などでも発症し,飲酒を要因とする頻度は低下傾向にある.
また,内視鏡検査や治療における過送気が原因の場合もある.
診断
内視鏡検査でなされることが多い.
発生部位別分類として下記のZeifer分類があり,I型 : 食道限局型, II型 : 食道胃併存型(Fig. 1a),III型 : 胃限局型(Fig. 1b)に大別される.
胃側を主体とするII型が80%を占め,I型は極めてまれである.
壁在性では,0~3時方向(小彎側)が51.5%と最も多く,後壁側が21.5%,前壁側18.4%の順である.
臨床的にまれな大彎側は8.6%と少ない.
裂創の深さであるが,65%が粘膜下層にとどまる一方,30%は固有筋層に及ぶ(Fig. 2)とされる2).