NBI (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)

narrow band imaging

狭帯域内視鏡(narrow band imaging ; NBI)システムとは,国立がんセンター東病院の佐野・武藤ら1)とオリンパス社の後野氏2)とで2006年に産学共同開発された内視鏡システムである.

その特徴は,内視鏡の観察光の分光特性を狭帯域特性へ変更し(短波長側にシフト),病変の視認性や表面微細構造,微小血管観察の向上を可能にしたことにある.

これらの現象は光の散乱特性に基づく現象であるが,一般に,短波長の光では表層の情報,長波長の光では深部の情報を反映しており,

これらの組み合わせによる視認性変化を検討した結果,415nm,540nmの波長を使用することが最も病変の視認性を向上することが明らかとなり,これら2つの波長を搭載している(Fig. 1, 2)

Fig. 1 NBI システムのフィルター特性.通常光が400~800 nm の可視光をすべてカバーしているのに対して(white light),NBI では415 nm,540 nm を中心とした短波長の狭帯域を使用している(bluelight).この変換は内視鏡手元のスイッチで1 秒以内に行うことが可能である.
Fig. 1 NBI システムのフィルター特性.通常光が400~800 nm の可視光をすべてカバーしているのに対して(white light),NBI では415 nm,540 nm を中心とした短波長の狭帯域を使用している(bluelight).この変換は内視鏡手元のスイッチで1 秒以内に行うことが可能である.

Fig. 2 NBI システムのフィルター装置と実際の照明光.内視鏡手元のスイッチを操作することで,光源前面にフィルターが着脱されることによりNBI 観察が可能となる.実際の内視鏡先端から発する光はwhite light からblue light に変化する.
Fig. 2 NBI システムのフィルター装置と実際の照明光.内視鏡手元のスイッチを操作することで,光源前面にフィルターが着脱されることによりNBI 観察が可能となる.実際の内視鏡先端から発する光はwhite light からblue light に変化する.

血中を流れる酸化型ヘモグロビンは光を吸収し熱を発生させるが,その吸収領域のピークが415nm,540nmであることがわかっており,

NBIモードで発せられたblue lightの大部分は血管内を流れる赤血球の中のヘモグロビンに吸収され,血管が黒茶色に描出される.

一方,そのほかの部分では,光はいったん組織内に入った後散乱を起こし,再び反射してくるので血管とのコントラストが明瞭に描出されることになる.

こうした原理のもと,現在NBIシステムは,食道,胃,大腸を中心に,病変の発見3)4)や質的・量的診断5)6)に広く利用されている(Fig. 3)