この用語について,正式な定義はない.
一般的には,非ステロイド抗炎症薬(nonsteroidal antiinflammatory drug ; NSAID)の投与が原因で発生した胃潰瘍とされている.
NSAIDs起因性の胃腸傷害は1970年頃から欧米を中心に報告がなされ,1980年代からは本邦でも注目を集めるようになった.
H. pylori感染率の低下と高齢化により,NSAIDs潰瘍がクローズアップされており,
近年は抗血小板薬として用いられている,低用量アスピリン(low-dose aspirin ; LDA)による潰瘍が増加している.
非アスピリンNSAIDとLDAによる傷害は,区別して論じられることが多い.
非アスピリンNSAIDとLDAを総称し“NSAIDs”,非アスピリンNSAIDのみを“NSAID”と称することもある.
潰瘍の発生部位は,H. pyloriによる潰瘍の場合は胃角から体下部小彎,つまり従来から提唱されてきた,大井の二重規制説に合致する部位で単発が多い.
NSAIDs起因性胃潰瘍では前庭部に好発し,多発する傾向があり,長期投与例においてその傾向が著明である(Fig. 1)1).
短期投与例では,胃体部にも発生する(Fig. 2)2).
時に前庭部の潰瘍が十二指腸球部に穿通し,重複幽門(double pylorus)を形成することがある.