Peutz-Jeghers症候群は,(1) 食道を除く全消化管の過誤腫性ポリポーシスと (2) 口唇,口腔,指趾の色素沈着を特徴とする常染色体優性遺伝性疾患である.
家族歴は約半数で認められるが,残り半数は孤発例である.
(1) の消化管ポリポーシスは食道を除く全消化管に散在性に発生するが,ポリープの発生する頻度は小腸が最も高く,数も多い.
大きさは様々で,大きくなるに従い分葉状,有茎性となる(Fig. 1, 2).
ポリープの組織像は過誤腫であり,上皮の過形成と粘膜筋板のポリープ内への樹枝状増生を特徴とする.
(2) の色素斑は1~5mmほどの大きさで口唇,口腔粘膜に最も多く認められ,
指趾,顔面,手掌,足底,陰部,まれに腸管内にも認められる.加齢とともに退縮,消失することが多い.
合併症は前期合併症(ポリープによる腸重積・出血・腹痛)と後期合併症(悪性腫瘍の発生)に分けられる.
ポリープは上述のごとく有茎性であるため,腸重積や,潰瘍出血,腹痛発作を引き起こす.
また,重積した腸管や拡張した口側の腸管などを触れることがある.
(1) の好発年齢は若年であり,1/3は10歳前,50~60%は20歳前に発症すると言われる.
(2) の悪性腫瘍の合併は30歳以降が多く,上述の消化管(大腸,小腸,食道・胃)はもとより,消化管外(乳腺,膵臓,卵巣・子宮,精巣,肺)にも発生するため,
消化管のみならず,腹部超音波検査,胸腹部造影CT,マンモグラフィ,婦人科検診などの経年的なスクリーニングを忘れてはならない.
治療は原則,ポリープの内視鏡摘除である.