従来,異型のない鋸歯状ポリープは過形成性ポリープ(hyperplastic polyp ; HP)と呼ばれ,
癌化の危険はほとんどない病変とされていた.
1990年にはLongacreら1)により,鋸歯状構造を有する鋸歯状腺腫(serrated adenoma)という概念が提唱された.
また,1996年にはTorlakovicらが癌を合併するHPの亜型を見い出し,
2003年にマイクロサテライト不安定性を示す大腸癌の前駆病変としてSSA(sessile serrated adenoma)という名称を提案し2),
新しい発癌経路serrated neoplastic pathwayが想定された.
この病変は不規則な細胞異型と不整な構造を有する鋸歯状病変であるが,
腫瘍性であることが不明確なため,atypical hyperplastic polypや
sessile serrated polyp,sessile polyp with abnormal proliferationなどの名称でも報告されてきた.
このような変遷を経て,最新のWHO分類ではadenomaとpolypの両者を併記するSSA/P(SSA/polyp)という用語が用いられ,
鋸歯状病変はHPとSSA/P,TSA(traditional serrated adenoma)に分類された3).
最近の報告でSSA/Pの本質は陰窩上皮細胞の増殖と分化の異常(正常構築からの逸脱),
すなわちcompartmentalizationの異常により生じるという病変の本質が明らかとなった.
本邦では大腸癌研究会のプロジェクト研究において,
“SSA/Pは腫瘍とは断定できない鋸歯状病変のうち,10%以上の領域に,
(1) 陰窩の拡張,
(2) 陰窩の不規則分岐,
(3) 陰窩底部の水平方向への変形(逆T字・L字型陰窩の出現)
のうち2因子以上を認めるものをSSA/Pとする”という診断基準が提唱されている(Fig. 1)4).
参考文献
類義語
著者
八尾 隆史 (順天堂大学医学部人体病理病態学講座)