adenoma-carcinoma sequence (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)

adenoma-carcinoma sequence

大腸の良性腫瘍である“腺腫”の中に起きる発癌機転を,ACS(adenoma-carcinoma sequence)という.

1970年代にMorson1),Mutoら2)により体系化された.

ACSの直接的証拠としては,腺腫内癌(腺腫の一部に癌巣が認められること)の存在がある(Fig. 1)

絨毛・絨毛管状腺腫,異型度の高い腺腫,大きい腺腫ほど癌化率が高いとされる.

Fig. 1a 大きさ10 mm の0-Ip 型pM 癌(腺腫内癌,*部分が癌部).
Fig. 1a 大きさ10 mm の0-Ip 型pM 癌(腺腫内癌,*部分が癌部).

Fig. 1 b  癌部(高分化~中分化管状腺癌).
Fig. 1 b  癌部(高分化~中分化管状腺癌).

Fig. 1c  癌部周囲の腺腫部(低異型度管状腺腫).
Fig. 1c  癌部周囲の腺腫部(低異型度管状腺腫).

 ACSは,当初は2cm以上のポリープ型腺腫に起きると考えられておりpolyp-cancer sequenceとも表現されてきたが,

後に1cm前後の小さな腺腫や平坦な腺腫(flat adenoma)でもACSが存在することが示されるようになった.

筆者らのデータでは,腺腫の癌化率は5mm以下で1.8%,5~10mmで9.1%,10~20mmで32.9%,20mm以上では67.8%である.

腺腫の癌化ポテンシャルを否定する研究者はいないが,大腸癌組織発生の主経路がACSによるかどうかについては賛否両論がある.

Mutoら2)は,大腸癌の大部分はACSにより発生するとしている.