大腸の良性腫瘍である“腺腫”の中に起きる発癌機転を,ACS(adenoma-carcinoma sequence)という.
1970年代にMorson1),Mutoら2)により体系化された.
ACSの直接的証拠としては,腺腫内癌(腺腫の一部に癌巣が認められること)の存在がある(Fig. 1).
絨毛・絨毛管状腺腫,異型度の高い腺腫,大きい腺腫ほど癌化率が高いとされる.
ACSは,当初は2cm以上のポリープ型腺腫に起きると考えられておりpolyp-cancer sequenceとも表現されてきたが,
後に1cm前後の小さな腺腫や平坦な腺腫(flat adenoma)でもACSが存在することが示されるようになった.
筆者らのデータでは,腺腫の癌化率は5mm以下で1.8%,5~10mmで9.1%,10~20mmで32.9%,20mm以上では67.8%である.
腺腫の癌化ポテンシャルを否定する研究者はいないが,大腸癌組織発生の主経路がACSによるかどうかについては賛否両論がある.
Mutoら2)は,大腸癌の大部分はACSにより発生するとしている.