de novo癌 (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)

 de novo癌とは,腺腫などの先行病変を介さず,“臓器固有の正常組織から直接発生する癌”と定義される.大腸de novo癌の存在は,1960年代前後から欧米でも指摘されてきた1)2)が,1980年代以降,日本の研究者ら3)4)によって大腸癌のde novo発癌説が体系付けられた.中村は癌と腺腫の病理組織診断の数値化を試み,それにより大腸癌の病理組織像を再検討した結果,2cm以下の66%,5mm以下では97%が腺腫非併存癌であり,大腸癌の70~80%は腺腫を先行病変としないde novo癌であろうとしている.

 しかし,厳密には,病理形態学的にde novo癌の診断をすることはできない.顕微鏡的にとらえられる癌は,既に形態学的に認識可能な大きさまで生長したものであり,発癌当初からの経過を観察することは不可能である.したがって,病変全体が純粋に癌のみで構成されていても,その発生初期に腺腫などの先行病変が存在し,癌の生長に伴ってそれらが駆逐された可能性を否定することはできないからである.腺腫を併存する癌は腺腫の癌化例と考えることができるが,“腺腫非併存癌”はde novo癌であるための必要条件にすぎず,de novo癌と同義ではない(Fig. 1)