neuroendocrine neoplasms (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)

neuroendocrine neoplasms

概念と分類 

 消化器腫瘍の新WHO分類(第4版,2010年)では神経内分泌に分化した腫瘍をneuroendcrine neoplasmsと総称し,それに含まれる腫瘍を以下のように分類した(Table 1,1980年と2000年の消化器内分泌細胞性腫瘍の分類を対応させている)1).低悪性度と高悪性度腫瘍に大きく分けられ,従来と比べて分類の概念が明瞭となった.以前,前者は消化管では低悪性度腫瘍はcarcinoid tumor,膵ではislet cell tumorと呼ばれていたが,2000年のWHO分類(第3版)ではwell differentiated endocrine tumor and well differentiated neuroendocrine carcinomaとされた.この分類は言葉と概念に混乱を来したため,今回はこれらをまとめてNET(neuroendocrine tumor)とし,さらに転移の危険性がないか極めて低いものをNET grade 1(旧分類のwell differentiated endocrine tumor),転移を来す可能性のあるものをNET grade 2(旧分類のwell differentiated endocrine carcinoma)とした.高悪性度腫瘍は旧分類でpoorly differentiated endocrine carcinomaとされていたが,NEC(neuroendocrine carcinoma)とMANEC(mixed adenoendocrine carcinoma)に分けた.したがって,NETとNECは生物学的には全く別な腫瘍としての理解が可能となった(Table 1)

Table 1 消化器内分泌細胞性腫瘍の分類(WHO)
Table 1 消化器内分泌細胞性腫瘍の分類(WHO)

神経内分泌腫瘍と内分泌細胞性腫瘍 

前述したように,WHOをはじめ世界ではneuroendocrine tumor and carcinoma(神経内分泌腫瘍と神経内分泌癌)と記載されている.

これに対し,日本の消化管癌の取扱い規約2)3)では低悪性度腫瘍はcarcinoid,高悪性度腫瘍は内分泌細胞癌(endocrine cell carcinoma ; ECC)と記載されている.

この中で後者は消化管では多くの場合,粘膜にみられる腺癌あるいは食道では,扁平上皮癌4)が深部浸潤したときに腫瘍細胞が内分泌細胞へ分化した癌となるため,

また接頭語として“神経-neuro”がつかないのは,

消化管では内分泌細胞は正常腺管の増殖細胞から分化する細胞で,基本的に本腫瘍が神経外胚葉ではなく内胚葉性起源の腫瘍のためである.


neuroendocrine tumor(神経内分泌腫瘍 

従来carcinoid tumorと呼ばれてきた腫瘍である.

その発生部位は日本では欧米と異なり直腸に最も多く,次いで胃,十二指腸,空・回腸の順にみられる.

胃の神経内分泌腫瘍は発生環境の違いによりtype 1,2,3に分類される1)

type 1 : 自己免疫性胃炎(autoimmune gastritis)を伴うもの.

本腫瘍はECL(enterochromaphin like)cell tumorで,胃底腺粘膜領域の萎縮と腸上皮化生も高度である胃体部に発生する.

また腫瘍は多発し,さらに背景の萎縮した胃体部粘膜には非腫瘍性の内分泌細胞小胞巣(WHOではhyperplastic and preneoplastic lesionsと称され,

粘膜中層から深部にリンパ球より大きめの細胞が十数個程度の胞巣を形成している)が多発している.

一方,幽門腺粘膜は萎縮が少なく,ガストリン細胞(G cell)の過形成がみられ,血中ガストリン値の上昇(hypergastrenaemia)を伴う.

また壁細胞減少により,低酸ないしは無酸(hypo or achlorhydria)を示す.

type 2 : 多発した内分泌腫瘍MEN1(multiple endocrine neoplasia)とZollinger-Ellison症候群に伴ってみられる.

後者はガストリン産生腫瘍で,多くは十二指腸と膵に分布する.

type 3 : 以上のものを伴わないsporadic tumor.多くは胃体部に発生するが,単発で背景粘膜の萎縮は軽度である.

このほか分化した内分泌細胞の種類,あるいは産生するホルモンにより,

ECL(enterochromaffin-like)cell NET,EC(enterochoromaffin)cell NET,gastrin producing NET(gastrinoma),などと呼ばれる.

胃ではECL cell NETが最も多くみられる.またgastrinomaは十二指腸に多くみられる.

 

NETの悪性度分類1)5)

grade 1 : 細胞あるいは核異型が全くみられず,核分裂も極めて少ないかみられない.

またKi-67(MIB1)による免疫染色で,最も染色された核が多い部分(hot spot)で標識率が2%以下(10倍視野)とされている.

grade 2 : リンパ節や肝転移の危険性があるものである.

核の軽度大小不同あるいは異型を示す.

また核分裂も散見され,MIB1 indexが2%以上である(Fig. 1)