びらん (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)

erosion

 組織学的には,粘膜筋板を越えない浅い粘膜の組織欠損をびらんと称するが,臨床的には様々な疾患でびらんを生じるため,その鑑別が重要である.

 良性びらんには,ストレスや薬剤,H. pylori感染を原因としたものや(Fig. 1, 2),Crohn病などの全身疾患,ウィルスや細菌,梅毒などの感染に伴うものまで多様であるが,びらんが多発することがほとんどである1)

Fig. 1 たこいぼびらん.前庭部前壁に辺縁隆起を伴う発赤調の陥凹を認める.左右対称性で,同心円状である.陥凹の境界は不明瞭で,陥凹内には再生様の顆粒を認める.周囲にも同じような病変が散見される.
Fig. 1 たこいぼびらん.前庭部前壁に辺縁隆起を伴う発赤調の陥凹を認める.左右対称性で,同心円状である.陥凹の境界は不明瞭で,陥凹内には再生様の顆粒を認める.周囲にも同じような病変が散見される.

Fig. 2 H. pylori 菌陽性のびらん.前庭部大彎に,不整形な発赤調の陥凹を認める.境界は不明瞭で,陥凹内の腺管模様は再生様であり,明らかな悪性所見は認められない.表面には白苔が付着している.
Fig. 2 H. pylori 菌陽性のびらん.前庭部大彎に,不整形な発赤調の陥凹を認める.境界は不明瞭で,陥凹内の腺管模様は再生様であり,明らかな悪性所見は認められない.表面には白苔が付着している.

  腫瘍性か否か,悪性か良性かの鑑別が重要だが,単発で不整なものは癌を考える必要がある.

左右非対象などの不均一な形状を示し,陥凹境界が棘状にはみ出し,周囲に不整な辺縁隆起を伴うものは,分化型胃癌を疑う(Fig. 3)2)