アメーバ性大腸炎 (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)

amebic colitis

 赤痢アメーバ感染症の原因は原虫のEntamoeba histolyticaであり,腸アメーバ症と腸外アメーバ症に分類できる.前者は赤痢様の激しい症状を示すアメーバ赤痢とアメーバ性大腸炎に分類できるが,現在ではこの分類にあまり意味がなく,両者を含めてアメーバ性大腸炎と呼ぶことが多い.嚢子が経口摂取されることにより感染し,下部小腸で栄養型となり,大腸,特に盲腸で成熟し分裂,増殖する.その後粘膜に侵入し,壊死に陥らせ下掘れ潰瘍を形成する.

 本邦での感染原因は発展途上国への旅行より性行為によるものが圧倒的に多い.男性同性間感染が多いが,最近では風俗店を介した異性間感染が増加している.多くは慢性に経過し,下痢,粘血便,腹部膨満感,腹痛などで寛解と再燃を繰り返す.劇症型とは,急速に大腸の広範な全層性壊死が進行し,腸管穿孔や多臓器不全を併発した死亡率の高い病態を言う.

 血便の精査で受診することが多いため,内視鏡診断が重要である.直腸と盲腸が好発部位であり,両部位あるいは一方にみられることが多い.たこいぼ様びらん・潰瘍は本症の特徴的所見であるが(Fig. 1a),必ずしも全例にみられない.自然出血を伴う,あるいは周囲に紅暈を伴う多発びらん・潰瘍も本症に特徴的な所見であり(Fig. 1b),この3所見で90%以上は診断可能である1).この所見以外では偽膜を伴う潰瘍や巨大潰瘍などがある.虫体は白苔の部分に存在するため白苔を含むように生検する.生検での検出率は70%程度であり,腸液や白苔の直接鏡検や血清抗体や糞便検査などを併用することが確定診断のためには重要である.