サイトケラチン (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)

cytokeratin ; CK

サイトケラチン(cytokeratin ; CK)は,上皮細胞の細胞骨格を形成する中間フィラメントの1つで,その種類は約20種類に及ぶ1)

中間フィラメントの分子構造は組織特異的であり,病理診断の免疫組織化学検査で頻用されている.

vimentinは間葉由来の細胞とある種の神経外胚葉由来の細胞,desminは筋細胞,GFAPはニューログリア細胞の中間フィラメントである.

サイトケラチンは,等電点によって酸性ケラチン(Type Iケラチン)と塩基性ケラチン(Type IIケラチン)に分けられ,

両者はそれぞれ2本ずつのケラチン線維が4量体を形成した形で発現する.

分子量による分類では,低分子ケラチン(40~64kD : CK7,8,17~20)と高分子ケラチン(48~67kD : CK1~6,9~16)に分けられる2)~4)(Table 1)

皮膚の角化型扁平上皮で発現するCKの分子量が最も大きく,角膜や粘膜の非角化型扁平上皮が続き,腺上皮や重層扁平上皮の基底細胞は低分子ケラチンが主体を成す.

Table 1 正常上皮におけるcytokeratin の発現性
Table 1 正常上皮におけるcytokeratin の発現性

病理診断などで良く用いられるサイトケラチンは以下のとおりである.

cytokeratin AE1/AE3 AE1は酸性サイトケラチン(Type I)のCK10/12/14/15/16/19を,AE3は塩基性ケラチン(Type II)のCK1/3/4/5/6/7/8を表す.

ほぼすべての上皮細胞と癌で陽性となる優秀な上皮マーカーである.

上皮性腫瘍であるのか,非上皮性の腫瘍であるのかの鑑別には頻用される.

また,微小な上皮性腫瘍の存在〔微小リンパ節転移診断の補助,

extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue(MALT lymphoma)のLEL(lymphoepithelial lesion)の存在診断など〕としても有用である.

ただし,肝細胞癌では陽性率は約20%と低く,腎癌(近位尿細管由来)では,CAM 5.2のほうが診断に有用である.

cytokeratin 34βE12(CK1/5/10/14) 

高分子サイトケラチンの代表である.

扁平上皮系腫瘍と導管上皮に由来する癌において発現する.扁平上皮と扁平上皮癌の検出に有用である.

cAM 5.2(CK7/18) 

低分子サイトケラチンに対する代表抗体である.