大腸癌発生のハイリスク群に対し,定期的に大腸内視鏡検査を施行して癌発生を監視することをいう.
広義には大腸癌手術後症例,大腸癌・腺腫の内視鏡摘除後症例,家族性腺腫症などが対象になるが,
一般にSC(surveillance colonoscopy)という用語を使用する場合には狭義の対象として炎症性腸疾患,特に潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)に定期的に施行する大腸内視鏡をいうことが多い.
UCの大腸癌合併の危険因子として罹患年数の長さ,罹患範囲の広さ,大腸癌の家族歴,原発性硬化性胆管炎の合併,若年発症などが報告されている1).
欧米のUC癌サーベイランスプログラム2)では,全大腸炎型で発症10年,左側大腸炎型で発症15年,原発性硬化性胆管炎合併例では診断時よりSCを開始し,
隆起性病変など有所見部位(Fig. 1),および前癌病変であるとともに癌併存の高危険度マーカーである異型上皮(dysplasia)を発見する目的で,平坦部位からも生検組織を採取する(Fig. 2).
SCの結果および内視鏡的活動度,大腸癌の家族歴などを参考に次回のSC施行時期を決定するが,
炎症の程度が強い症例,活動期であった期間が長い症例,炎症性ポリープ・管腔狭小化・腸管の短縮などの所見がある症例には,1年に一回のSCを推奨している.
一方,SCの結果dysplasiaが発見されず,内視鏡的に寛解状態であれば3~5年の間隔をあけてよいとされている.
病変の約80%が直腸・S状結腸に存在するため,同部位においては色素内視鏡を併用し,体位変換なども行った精度の高い再現性のある内視鏡観察が重要である3).