2002年11月に内視鏡医,外科医,病理医の国際的グループがパリ(Paris)に集まり,
食道,胃,大腸の表在型腫瘍(superficial neoplastic lesion)に対する日本の肉眼形態分類の有用性と臨床的意義を検討するワークショップが行われた1).
その際,多くの合意事項のもとに消化管の表在型腫瘍に対するパリ分類が成立した.
以下にパリ分類の概要を紹介しその評価や問題点について述べる.
パリ分類の概要
(1) 肉眼形態分類は内視鏡診断時の肉眼所見のみで行い,
診断前の予備知識に左右されたり病理所見によって変えるべきではない.
(2) 内視鏡的にみて病変の外観がsmall cancerかnoninvasive neoplastic lesion(dysplasia/adenoma)を示唆するものを
“superficial(表在型)”という用語を用いて表在型腫瘍(superficial neoplastic lesion)と呼ぶ.
表在型腫瘍が癌の場合は概してT1 stageまでのinvasive cancerに相当する.
(3) 内視鏡検査において,進行癌はJapanese-Borrmann分類に則ってtype 1~type 5の5型のいずれかに分類する.
表在型腫瘍と判断される病変はtype 0に分類し,できれば計測スケールなどを用いてその大きさをできるだけ正確に把握する.
(4) type 0病変は肉眼形態によってさらに亜分類される.
その際用いられる形態分類用語はSchlemperらの論文2)で使用されているものに統一する.
(5) type 0病変は,形状からPolypoid(type 0-I)とNon-polypoid(type 0-IIa,IIb,IIc,III)に分け,
さらにtype 0-Iはtype 0-Ip(pedunculated)とtype 0-Is(sessile)に分類する(Fig. 1, 2).
type 0-Isp(semipedunculated)は臨床的意義に欠けるため削除しtype 0-Isと同様に扱う.
(6) type 0-IIaは,病変の高さが閉じた生検鉗子の高さ(約2.5mm)を超えないものを指し,
それより高い病変はtype 0-Isに分類する(Fig. 3).
(7) type 0-IIcとtype 0-IIIの違いは内視鏡所見からみた陥凹の深さにある.
前者は粘膜層のびらんであることが多く,後者は粘膜層やしばしば粘膜下層の欠損を来す潰瘍である.
type 0-IIIはBarrett食道や胃の病変に対してのみで,大腸病変には適用されない.
(8) 混合型には,まずtype 0-IIa+IIc,type 0-IIc+IIaがある.
type 0-IIa+IIcは病変頂部に中心陥凹を伴う隆起性病変を指し,
陥凹面が周辺粘膜よりも低いものと,高い位置にある相対的陥凹がある.
type 0-IIc+IIaは一部辺縁隆起あるいは中心隆起を伴う陥凹性病変を指す(Fig. 4a).