ボーリング生検とは
通常の鉗子生検では粘膜および粘膜下層の一部しか採取できないため,病変の主座が粘膜下層以下の深部に存在する場合には目的とする組織標本を採取することが困難である.
ボーリング生検とは,粘膜表面から深部に向かって同一の部位より鉗子生検を繰り返し,深部に存在する病変の組織を採取する方法である.
ボーリング生検の適応
ボーリング生検の適応は,GIST(gastrointestinal stromal tumor)をはじめとする粘膜下腫瘍,通常の鉗子生検では癌陰性のスキルス胃癌1),粘膜下腫瘍様形態を呈する胃癌などが疑われる症例である.
一方,悪性リンパ腫やカルチノイド腫瘍は粘膜下腫瘍様にみえても,腫瘍組織が比較的表層にも存在するため通常の鉗子生検でも腫瘍細胞の採取が可能な場合が多い.
ボーリング生検のコツ(Table 1)
ボーリング生検の手技のコツとして,(1) 先端が鋸歯状になったサイズの大きな生検鉗子を使用する,
(2) 可能な限り病変を正面視して,病変に対して生検鉗子を垂直に押し付けるようにして採取する,(3) ピンポイントで生検を繰り返す,などがある2).
病変の正面視が難しい場合,スコープ先端に透明キャップを装着するといった工夫が必要である.
表面に潰瘍形成を伴う場合は,その部位より生検を繰り返すと目的とする組織が採取できる可能性が高い.
腫瘍組織を採取するのに必要な生検個数は,病変が存在する深度や正確にピンポイントで生検できたか否かで異なるが,
GISTを疑う場合には通常10~20個くらいの生検が必要である.
ボーリング生検の留意点
ボーリング生検の留意点として,通常の鉗子生検以上に出血に対して配慮する必要がある.