マントル細胞リンパ腫(二村 聡の消化管病理用語集)

mantle cell lymphoma

形態的には軽度の核形不整を示す中型主体のB細胞が、単調かつ、びまん性または結節性に増殖する腫瘍と定義されます(Fig.1)。

分子生物学的にはt (11;14)(q13;q32)転座に起因するcyclin D1の過剰発現を伴うB細胞腫瘍と定義することができます。この分子生物学的異常の発見には、辻本博士らの精力的な解析が貢献しました。1984年、彼らはt(11;14)切断点近くの遺伝子をクローニングし、その翌年にBCL1として報告しました。その後、11q13に座する遺伝子の探索により、1991年についに、この領域の近傍にcyclin D1遺伝子 (CCND1)の存在が突き止められました。以後、CCND1と免疫グロブリン重鎖遺伝子 (IGH)との再構成が、マントル細胞リンパ腫の本質的な遺伝子異常とみなされ、現在に至ります。

このように、本病型の分子生物学的異常の発見には日本の医学者が貢献していることが特記されます。
最後に、本病型の腫瘍細胞にはIGHの体細胞変異がほとんど見られないことが判明し、本病型の正常対応細胞は、リンパ濾胞に移動する前のB細胞であると考えられています。
本病型の免疫形質および生物学的悪性度については、成書を参照してください。


Fig.1 マントル細胞リンパ腫の組織像(対物100 倍レンズで油浸撮影).
中型細胞が単調に増殖している.核は類円形のものからわずかに切れ込んだものまでさまざまである.しかし,濾胞性リンパ腫のごとき長軸に沿って深く切れ込んだ核は認められない.

〔二村 聡:消化管組織病理入門講座・11【全消化管】消化管に発生するリンパ腫(後編)―各病型の組織像を中心に.胃と腸 49:8,2014 より転載〕

 

 

 

 

 

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著者

  • 二村 聡 : 福岡大学筑紫病院病理部・病理診断科

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