偽浸潤とは,大腸上皮性腫瘍の病理組織学的診断において,腺腫組織が粘膜固有層(付随間質)を伴って粘膜下層に逸脱している現象のことをいう(Fig. 1).
粘膜下層への腺管の出現は,炎症性腸疾患,粘膜脱症候群,過形成性ポリープ,Peutz-Jeghersポリープなどでも時にみられるが,
これらの場合の腺管は腫瘍性異型のない上皮から成り,むしろ異所性(heterotopia)とも言うべき現象で,大腸腺腫における偽浸潤とは区別される.
この偽浸潤は“pseudocarcinomatous invasion”として発表され,
ほかに“epithelial misplacement”,“pseudocarcinoma”,“pseudoinvasion”などとも呼ばれる.
S状結腸に好発し1~2cmの有茎性腺腫に多くみられるとされ,
また,mechanical forceによって粘膜筋板の間隙から腺腫組織が粘膜下層へ逸脱することがこの現象の本態であると考えられている1).
その組織学的特徴として,
(1) 粘膜下層に位置する腺管は粘膜内の腺腫成分と連続している,
(2) 粘膜下層に位置する腺管は細胞学的に良性で典型的な腺腫性上皮から成り,粘膜固有層によって取り囲まれている,
(3) 粘膜下層の腺腫性腺管はしばしば嚢胞状拡張を示し,内部に粘液を貯留し,時に出血を伴う,
(4) 高率に血鉄素(hemosiderin)沈着を伴う,