偽膜とは黄白色の扁平あるいは半球状の低い隆起であり,
組織学的にはフィブリン,粘液,好中球,上皮残渣,壊死物質などから成る炎症性物質が粘膜表面に付着した隆起である.
形態的に偽膜を形成した腸炎を偽膜性腸炎と総称する.
そのほとんどがClostridium difficile(Cd)による腸炎であるが,
他の病原微生物(ブドウ球菌,腸管出血性大腸菌,赤痢アメーバ,サイトメガロウイルス)による感染性腸炎や虚血性腸炎でも偽膜や偽膜様所見を呈することがある(Fig. 1)1).
しかし,通常偽膜性腸炎と言えば偽膜を形成するCd腸炎を指す.
偽膜性腸炎は基礎疾患をもつ患者が広域抗菌薬を服用後に発症することが多い.
菌交代現象によりCdが増殖して毒素を産生し,偽膜性腸炎を発症する.
診断は嫌気培養でCdを検出,あるいは便中Cd毒素の検出による.
大腸に主に認められるが,炎症性腸疾患の手術後では小腸に病変を認めることがある.
典型的な内視鏡像は,全周性に分布する黄白色の低い半球状隆起であり,介在粘膜は浮腫を示すことが多い(Fig. 2).