内分泌細胞微小胞巣 (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)

endocrine cell micronest

概念 

胃の内分泌細胞微小胞巣(endocrine cell micronest ; ECM)は,粘膜内の内分泌細胞が腺管外に集合体を形成したもので,

大きさは50μm程度(48.5±14.1μm,自験例ECM 3,057例の平均)で,卵円形から円形ないし索状形態を呈し,

萎縮胃底腺領域の粘膜深部に観察されやすい(Fig. 1)

自己免疫性胃炎(いわゆるA型胃炎)や高ガストリン血症に伴って高頻度に観察される.

通常,消化管クロム親和性細胞様細胞(enterochromaffin-like cells ; ECL細胞)と呼ばれる内分泌細胞群から構成される.

Fig. 1 a A 型胃炎患者の胃体上部粘膜.種々の形態のECM が粘膜深部に多発している(HE ,20 × 10).
Fig. 1 a A 型胃炎患者の胃体上部粘膜.種々の形態のECM が粘膜深部に多発している(HE ,20 × 10).

Fig. 1 b  右下には大型で索状形態を呈しKi-67 陽性細胞を含むECM がみられる〔クロモグラニンA(M0869,mouse monoclonal,1 : 400,DAKO)+Ki-67(MIB1,mouse monoclonal,1 : 50,DAKO)二重免疫染色,20 × 10〕.
Fig. 1 b  右下には大型で索状形態を呈しKi-67 陽性細胞を含むECM がみられる〔クロモグラニンA(M0869,mouse monoclonal,1 : 400,DAKO)+Ki-67(MIB1,mouse monoclonal,1 : 50,DAKO)二重免疫染色,20 × 10〕.

内分泌細胞微小胞巣の組織発生 

ECMの組織発生については以下のように考えられている.

すなわち,(1) 胃底腺萎縮などによる胃酸分泌低下,

(2) 低胃酸に対するフィードバックによるガストリン値上昇,

(3) ガストリンの内分泌細胞に対するトロフィック作用の持続,

(4) 腺管内の内分泌細胞過形成および集簇,

(5) 内分泌細胞の腺管外への芽出および腺管自体の萎縮,

(6) 腺管外にECMの完成,の経路が想定されている(Fig. 2)1)2)