1980年代初頭に内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection ; EMR)が開発され,早期胃癌に対する内視鏡治療が一般的に行われるようになった.しかし,EMRは切除可能な病変サイズが小さいため分割切除が多く,遺残再発率が高いという問題点があった.内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection ; ESD)はそれらを克服するために開発された,粘膜および粘膜下層を切開・剥離し,一括で切除する方法である(Fig. 1).
ESDは,1983年に平尾ら1)によって報告されたERHSE(endoscopic resection with local injection of hypertonic saline-epinephrine solution)法を原型としている.ERHSEは局注後に高周波針状ナイフを用い病変周囲を全周切開し,スネアを用いて切除する方法であり,正確な切除範囲を決定できる方法であった.しかし手技の難易度が高く,またスネアのサイズ以上の病変は切除できないことや,当時はデバイスや高周波装置が未熟で出血や穿孔のリスクが高いなどの理由により,広く普及しなかった.