回腸嚢炎 (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)

pouchitis

 貯留囊として回腸嚢を作製し,大腸(亜)全摘術を受けた患者の回腸囊に発生する非特異性の炎症性疾患である.ほとんどが潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)患者に発生するので,UCの病態に関連した病態と考えられている.当初,UCに対する大腸全摘・永久回腸人工肛門造設術時に貯留囊として作製されたKock回腸嚢にみられる非特異性炎症(mucosal enteritis)として報告された1).回腸囊肛門(管)吻合術後では,1981年Nichollsらが生検で表層性潰瘍,陰窩膿瘍を伴う急性炎症と粘膜固有層に慢性炎症性細胞浸潤がみられ,糞便中の好気性菌増加所見と関連があると報告している.1986年にMoskowitzら2)が術後における回腸嚢の組織学的な経時的変化について報告し,そのときに用いられた炎症の組織学的scoreは,現在広く用いられているPDAI(Pouchitis Disease Activity Index)3)に踏襲されている.

 内視鏡所見は,UCに類似したびまん性の発赤,顆粒状粘膜,膿性粘液付着,びらんがみられる(Fig. 1)ほか,アフタや小潰瘍,不整形潰瘍が多発する例(Fig. 2)がある4)