大腸腺腫症は1975年Bussey1)が大腸に100個以上の腺腫を有し,常染色体優性遺伝を示す疾患をFPC(familial polyposis coli)としたのが始まりである.
その後,FPCに骨腫や軟部腫瘍を合併するものをGardner症候群と称していたが,
1990年代に第5染色体長腕上のAPC遺伝子が両疾患の原因遺伝子と判明し,ともに家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis ; FAP)として取り扱われるようになった.
近年,DNA酸化修復遺伝子であるMUTYH遺伝子のホモ変異に起因する大腸腺腫症の存在も判明し,MUTYH関連大腸腺腫症(MUTYH-associated polyposis ; MAP)と称されている2).
現在のところ,大腸腺腫症とはFAPとMAPを包括する病態であり,大腸全域に腺腫が多発し,放置すれば高率に癌化する遺伝性疾患と定義される3).
本症では,大腸全域に無茎性ないし亜有茎性の隆起性病変が多発するのが特徴で(Fig. 1, 2),結節集簇様病変や微小な平坦・陥凹型病変も認められる.
組織像の大半は腺管腺腫であるが,加齢とともに大腸癌のリスクが増大するため,予防的大腸切除術を行うことが推奨されている.
その際は,全大腸切除・回腸嚢肛門(管)吻合術が第一選択となる.
大腸切除術の待機期間に非ステロイド性抗炎症薬によるchemopreventionも試みられている.
大腸外病変として,上部消化管に腺腫や胃底腺ポリポーシスなどを高率に合併し,