消化管に好酸球浸潤を来す疾患は“eosinophilic gastrointestinal disorder”と総称されており,
その内原発性で,消化管のみに病変がみられるものが好酸球性胃腸炎である.
病変部位によって好酸球性食道炎,好酸球性胃炎,好酸球性小腸炎,好酸球性大腸炎とも呼ばれる.
好発部位は胃,小腸とされているが,従来まれと言われていた食道や大腸病変の報告も最近増加している.
気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患が約半数に合併する.
診断基準としてはTallyら1)のものが一般的であり,
(1) 消化管症状の存在,
(2) 消化管の1か所以上に生検で好酸球浸潤が証明されるか,または末梢血好酸球増多と特徴的なX線所見がみられる,
(3) 寄生虫など好酸球増多を示す他疾患を除外できる,の3項目を満たすことで診断されるが,
病変部位によって臨床像が異なっており,均質な疾患群とは考えにくい.
生検診断においては強拡大視野で20個以上の好酸球が存在することが一応の基準であるが,部位により浸潤程度に差があるため多数点での生検が必要である.
Kleinら2)は病理学的に,
(1) 粘膜病変を主とする“predominant mucosal layer disease”,
(2) 筋層病変を主とする“predominant muscle layer disease”,
(3) 漿膜下病変を主とし全層に病変を伴うことも多い“predominant subserosal layer disease”に分類している.
本邦での報告例では, (1) が約半数,(2) が2割程度,(3) はまれとされているが,実際の症例をこの分類に当てはめることは必ずしも容易でない.
胃病変は前庭部に好発し,びらん,発赤,浮腫,皺襞肥厚,潰瘍,隆起,陥凹,幽門狭窄など多彩な所見がみられる.
小腸病変は広範囲に浮腫によるKerckring皺襞肥厚,結節状の隆起,伸展不良,狭窄がみられるが,潰瘍を伴うことは少ない(Fig. 1).
大腸病変ではびまん性の顆粒状粘膜,発赤斑や点状出血,浮腫がみられる(Fig. 2).