小腸血管性病変の内視鏡所見は様々だが,これまで整理がされていなかった.
また,血管性病変に関する用語についても,多数の用語が曖昧な定義のまま使われ,
異なる用語が同様の病変に用いられる場合や,同じ用語が全く異なる病変に用いられる場合があり,混乱がみられる.
しかし,消化管の血管性病変は,病態が全く異なる静脈瘤や血管腫を除けば,
病理組織学的に (1) 静脈・毛細血管の特徴をもつ病変(angioectasia),(2) 動脈の特徴をもつ病変(Dieulafoy’s lesion),
(3) 動脈と静脈の特徴をもつ病変(arteriovenous malformation)の3種類に分類できる.
血管性病変の内視鏡所見から病態を判断し,適切な治療方法を選択するためには,動脈成分の有無,つまり拍動性の有無が重要なのである.
この点に着目して,小腸血管性病変の内視鏡所見を以下の6種類に分類した1)のが,矢野・山本分類である(Table 1).
Type 1(Fig. 1)は (1) に相当すると考えられ,大小様々で,同一症例に混在,多発することも珍しくない.
顕性出血を来し輸血を要する症例もあるが,顕性出血を伴わず貧血を主訴とする症例もあるほか,無症状で経過する例も少なくないと考えられる.
Type 2は (2) に相当すると考えられ,点状の微小な粘膜欠損部位から拍動性に出血する病変(Type 2a,Fig. 2)と,拍動を伴う赤い隆起性病変(Type 2b)がある.
動脈の特徴である内弾性板をもち血液の色が透見されにくいため,出血していないときにType 2aを見つけることは困難である.
Type 2bも,鮮紅色というより薄赤色の小さな拍動性隆起であり,注意深い観察を要する.
Type 3は動脈成分の存在を示唆する拍動性の隆起と,動静脈の短絡の存在を示唆する周囲の静脈拡張がみられることから,(3) に相当すると考えられる.
また,粘膜下腫瘍や有茎性ポリープのような形態をとる病変もまれにあるため,分類不可能な病変はType 4とした.
この分類は,あくまで内視鏡所見の分類であり,病理組織学的分類と必ずしも一対一対応しているわけではない.
また,2011年現在の小腸カプセル内視鏡は毎秒2枚の撮影で,拍動性の有無を判断できないため,カプセル内視鏡所見にこの分類を使用する場合には注意が必要である.
血管性病変をめぐる用語の混乱は,多施設間で知見を共有することを困難にしているが,