巨大皺襞には明確な定義はないが,腫大と屈曲蛇行を呈するひだのことをいい,ひだ間の溝は狭く,屈曲蛇行が強まれば大脳回転様所見を呈する.
X線的には適度に胃壁が伸展した二重造影像において幅が10mm以上のひだを,内視鏡的には十分な送気によっても腫大して観察されるひだを巨大皺襞と診断しているが,その概観をとらえるにはX線像が適している.
巨大皺襞は種々の疾患で認められる1)が,それ自体は良性あるいは悪性を意味するものではない.
巨大皺襞を裏打ちする病理組織学的変化2)は疾患によって異なり,(1) 胃腺の肥大または過形成によるびまん性の肥厚(肥厚性胃炎,Menetrier病,Cronkhite-Canada症候群),
(2) 粘膜間質の浮腫(急性胃炎)や種々の細胞浸潤による粘膜・粘膜下層の肥厚(悪性リンパ腫),(3) 粘膜下層や筋層の線維性組織増生に伴う収縮(スキルス型胃癌),
(4) 漿膜側からの炎症の波及(急性膵炎)などが認められるが,いくつかの機序が重なり単純でないこともある.
臨床的に巨大皺襞を認めた場合,胃壁の硬化を伴っているか,否かを鑑別3)することが重要である.
巨大皺襞の性状については,スキルス型胃癌(Fig. 1)では伸展不良で粘膜面への浸潤に基づく変化(不整形びらん・潰瘍)が観察され,
悪性リンパ腫(Fig. 2)では,伸展性は比較的保たれており,不整形の潰瘍が多発する傾向がある.