急性出血性直腸潰瘍 (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)

acute hemorrhagic rectal ulcer

 急性出血性直腸潰瘍は,河野ら1)により初めて報告され,広岡ら2)によって疾患概念が提唱された.その後,症例の蓄積と検討が重ねられ,臨床的特徴は以下の内容に要約される.(1) 重篤な基礎疾患を有する高齢者に多い.(2) 発症は突然で,無痛性大量の血便あるいは肛門出血で始まる.(3) 潰瘍は歯状線に接するかその近傍あるいは下部直腸に限局し,不整形,地図状,輪状あるいは全周性の場合もあり,多発性ないし単発性で,露出血管を伴うことがある(Fig. 1).(4) 経過は,一般に良好であるが,基礎疾患の重症度に依拠する傾向がある.

 

Fig. 1a 急性出血性直腸潰瘍症例,肛門出血当日の内視鏡像. 順方向観察.下部直腸に,環周度の大きい輪状潰瘍と多発する小さな潰瘍が観察される.周辺粘膜は軽度浮腫状で少量の血液の付着もみられる.
Fig. 1a 急性出血性直腸潰瘍症例,肛門出血当日の内視鏡像. 順方向観察.下部直腸に,環周度の大きい輪状潰瘍と多発する小さな潰瘍が観察される.周辺粘膜は軽度浮腫状で少量の血液の付着もみられる.

Fig. 1b  急性出血性直腸潰瘍症例,肛門出血当日の内視鏡像.反転観察.輪状潰瘍は歯状線近傍にみられる.また類円形,地図状の浅い潰瘍が多発している.
Fig. 1b  急性出血性直腸潰瘍症例,肛門出血当日の内視鏡像.反転観察.輪状潰瘍は歯状線近傍にみられる.また類円形,地図状の浅い潰瘍が多発している.

 発症の原因はストレス,血流障害などが挙げられ,さらにNSAID(nonsteroidal anti-inflammatory drug)坐剤使用例やサイトメガロウイルス感染例も報告されている3).本疾患は複数の誘因で発症する症候群とする見解もみられる4)