簇出(budding)は大腸癌において,癌細胞が個々に,あるいは小胞巣を形成しつつ散在性に間質内に浸潤する組織所見であり(Fig. 1),
固形癌の浸潤の重要なprocessの1つである,de-differentiationとdissociationの形態学的表現と位置づけることも可能である.
分化型腺癌の腫瘍表層や中心部間質に出現することはまれであり,基本的に浸潤先進部に出現する.
簇出は1980年代以降,治療方針決定のための指標として,まず本邦の臨床家により注目された病理組織所見である1)2).
近年になり本邦のみならず欧米でもその意義が認識されるに至ったが,その過程には名称に起因する概念上の混乱が存在した.
簇出の用語の起源は,1950年代に今井3)により提唱された,固形癌一般の癌胞巣の分類型の1つである“簇出発育(sprouting)型”にある.
この分類は癌胞巣の発育形態を,その幅を基準に延伸発育型,肥大発育型,簇出発育型の3つの基本型に分類するものであり,
簇出発育型は,この中で胞巣の厚さが最も小さいカテゴリーで,Broders分類の未分化細胞部に一致するとされる3).
今井分類の“簇出発育型”は胞巣の散在性を重視したものではなく,