内視鏡的に切除された消化管SM癌では,その粘膜下浸潤の程度が垂直浸潤距離により分類され,
内視鏡的切除による根治判定およびリンパ節郭清を伴う追加外科切除の適応判定のための病理組織学的因子のひとつとして用いられている.
食道,胃,大腸それぞれで,分類のための基準値とその意義付けは異なる1)~3).
食道扁平上皮癌1)では垂直浸潤距離200μm未満をSM1,以上をSM2に,
胃癌2)では500μm未満をSM1,以上をSM2に分類している.
大腸癌3)ではSM1,2の標記はなく,1,000μm未満か以上かに分類している.
食道扁平上皮癌ではSM1であっても内視鏡的治療で根治は期待できず,SM2以深では進行癌に準じた治療が必要とされる.
胃癌では,3cm以下の分化型SM1癌は内視鏡的治療による適応拡大治癒とされている.
大腸癌では,乳頭腺癌・管状腺癌で脈管侵襲陰性,簇出G1の場合は,SM垂直浸潤距離1,000μm未満で内視鏡的治療による根治が期待される.
垂直浸潤距離の計測法は,食道,胃ではいずれも“粘膜筋板下縁から計測する”と記載されているにすぎない.
他方,大腸ではより詳細な規定がなされている(Fig. 1)が,その理由としては,
(1) 粘膜下浸潤が1,000μm前後となると(食道癌の200μmや胃癌の500μmに比べ),粘膜筋板の変形や断裂,断片化などが生じることが多く,
垂直浸潤距離を計測するための基準となる粘膜筋板の同定または推定が困難になること,