1965年,Williams1)はX線二重造影像上,大腸粘膜表面にみられる最も微細な模様を「innominate grooves」と命名し,
ルーチン検査では約1/4に描出され,小範囲に認められるに過ぎない,と報告した.
1971年,刈谷,西澤ら2)は「innominate grooves」から形成される大腸粘膜の微細な模様をFNP(fine network pattern)と名付け,
大腸粘膜の微細所見の基本像と位置づけた.
彼らの努力によりこのnetwork patternの描出率は約70%へと向上した.
FNPの1区域は20~100の腺開口(pit)から形成されている.
また,FNPは上行,横行,下行結腸においては平均3×1mm,
S状結腸では四辺形に近くなり,大きさは2×1mm程度であるとされている(Fig. 1).
FNP描出率の向上により,微細・微小病変の描出・鑑別診断が可能となり,
潰瘍性大腸炎,腸結核,Crohn病,虚血性腸炎など炎症性腸疾患における病変の推移や治療効果の判定が可能となり,本邦のX線診断学の発展に大きく寄与した.
FNPはX線診断のみではなく,内視鏡検査や切除標本においても大腸粘膜の最小単位として共通して用いることが可能な用語である.
一方,内視鏡検査においてはインジゴカルミン撒布にてFNPは100%観察可能である.
実臨床においては,FNPが描出できれば,微細所見の描出は容易となるが(Fig. 2),現実的には前処置の状態によりFNP描出が困難な場合も多い.