「胃癌取扱い規約」1)では腺管形成の状態によって高分化型,中分化型と低分化型に腺癌を分類するが,細胞形質の分化傾向と核異型度は考慮されない.
超高分化腺癌は固有胃上皮や腸上皮化生に酷似し,異型の乏しい上皮細胞から成る腺管形成性悪性腫瘍と定義される.
一方,高分化腺癌を悪性度という観点から核異型に着目して,低異型度癌と高異型度癌に分ける試みもなされてきた2).
細胞分化のよさと核異型の乏しさに着目すると超高分化腺癌と診断されるものでも,規約に従えば中分化腺癌が主体と診断される症例もあり得る.
言葉のうえでは矛盾しているようにみえるが観点が少し異なる.
超高分化腺癌と低異型度癌には微妙な意味合いの違いがあるものの,日常的には類義語として“低異型度分化型胃癌”と一括し,
“組織学的診断,特に生検診断が難しい分化型癌”と考えればよい3).
低異型度分化型胃癌は次のように類型化できるだろう.
(1) 固有胃腺やその反応性変化との鑑別が困難な胃癌 : 胃型腺癌(腺窩上皮型,幽門腺型,胃底腺型,Fig. 1),
(2) 腸上皮化生との鑑別が困難な胃癌 : 腸型低異型度癌(Fig. 2),
(3) 腺腫のスペクトラムに含まれるような病変.
また,いわゆる“手つなぎ・横這い型”構築を示す胃癌も幼若な腸上皮化生との鑑別がしばしば困難で,内視鏡的にも範囲診断が難しい.
このような胃癌がまれならず存在することを認識することが重要である.
画像的に明らかな浸潤癌であるのに病理で腫瘍と診断されない場合もある.
腺窩上皮型の胃型腺癌はしばしば低分化腺癌に変化し,
低異型度分化型癌の形態を保持したまま粘膜下層以深に浸潤すると台形~カルデラ状の特徴的な外観を呈するようになる(Fig. 2a).