胃底腺は主細胞と壁細胞から構成されるが,2010年にUeyamaとYaoら1)が胃底腺(主細胞優位)への分化を示す腺癌を胃癌の新しい組織型として胃底腺型腺癌を提唱した.
胃底腺型腺癌は,高齢者の胃上部に好発し,多くは胃炎・萎縮・腸上皮化生のない正常胃底腺粘膜から発生するため,Helicobacter pyloriとは無関係と考えられている2).
初期には粘膜下腫瘍様の平坦な隆起であり,大きくなると0-IIa+IIc型の形態をとるものや,表層方向への増殖により隆起するものもある2).
組織学的には,腫瘍はやや淡明な灰青,好塩基性である主細胞に類似した細胞や比較的淡明で幽門腺に類似した細胞,好酸性顆粒状細胞質を有し,壁細胞あるいはPaneth細胞に類似した細胞の混在から成る.細胞異型は軽度であるが,腺管あるいは腺房構造をとる腫瘍細胞が不規則に分岐しながら粘膜深層部を主体に増殖し,小さいうちから高率に粘膜下層に浸潤する(Fig. 1).
しかしながら,低異型度のものでは脈管侵襲はみられず,細胞増殖活性やp53蛋白発現率も低く,低悪性度で予後良好であると考えられている1).一方,高異型度へ進展したものでは脈管侵襲もみられ悪性度が高いことが示唆される2).