内視鏡をはじめとした大腸の検査や治療を安全に正確に快適に行うためには,大腸内容物を除去する腸管前処置が必須である.
かつては食事制限,緩下剤,水負荷,浣腸を組み合わせた方法(Brown変法)に依存していた時代もあったが,現在は経口的に水溶液で腸管全体を洗う腸管洗浄法が主流である(Table 1).
当初用いられた大量の生理食塩液による腸管洗浄法では,過剰な塩分・水分吸収が問題となった.
マニトールを加え浸透圧を調整することによりこの問題は解決されたが,腸内細菌の作用によりマニトールから発生した爆発性ガスにより高周波治療中の爆発事故が報告され,二度と用いられることはなくなった.
マニトールに代わる浸透圧調整物質として,ポリエチレングリコールを用いた特殊組成電解質液(polyethylene glycol electrolyte lavage solution ; PEG-ELS)は,
経口摂取されて排泄される間に水や電解質の吸収・分泌が最終的にほとんどない腸管灌流液として開発された1).