萎縮性胃炎 (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)

atrophic gastritis

古くは1920年代のSchindlerらによる内視鏡的胃炎の研究から,本邦では1969年に木村・竹本らにより内視鏡的萎縮移行帯の概念が提唱され,

近年ではSydney systemによる胃炎の分類が国際的に広く普及し,萎縮性胃炎は組織学的,内視鏡的所見から他の胃炎と区別されている.

その病態は,H. pylori菌の感染をはじめとする様々な化学的・物理的刺激によって,粘膜固有層への炎症細胞浸潤が慢性的に起こり,固有腺が減少・消失することである.

通常は幽門腺領域より始まり,年齢とともに小彎を中心として胃底腺領域まで拡大し,多くの萎縮性胃炎では腸上皮化生を伴う.

萎縮粘膜と非萎縮粘膜の境界は,萎縮境界線と呼ばれ,口側からみて腸上皮化生のない胃底腺粘膜領域の限界線をF境界線,胃底腺粘膜が巣状に出現する領域の限界線をf境界線と定義され,その間の腺が混在する領域を中間帯(萎縮移行帯)という.

木村・竹本らの萎縮範囲による分類では,小彎側の萎縮が噴門を超えないものをclosed type,噴門を超えて大彎側まで進展するものをopen typeとされる.

画像所見としては,萎縮を伴うと胃小区は3mm以上の粗大なものになり,大小不同や配列の乱れが現れる.X線学的にはこれをareaの大小不同という(Fig. 1)

Fig. 1 萎縮性胃炎のX 線像.胃小区は大小不同がみられ,これをarea の不整という.
Fig. 1 萎縮性胃炎のX 線像.胃小区は大小不同がみられ,これをarea の不整という.

内視鏡的には,萎縮が進んだ粘膜は,大彎ひだが消失し,血管透見像を伴うまだらな褪色調の粘膜として認識できる(Fig. 2)