虚血性大腸炎 (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)

ischaemic colitis

 虚血性大腸炎は,大腸栄養血管の可逆性閉塞に基づく一過性の大腸粘膜虚血によって生じる疾患である.病態は不明であるが,心原性や微小血管の攣縮,細動脈硬化などの血管側因子と腸管内圧亢進および腸蠕動異常などの腸管側因子が絡み合い,腸粘膜あるいは腸管壁の血流低下を引き起こして虚血状態を作ると推定されている.飯田らの診断基準をTable 1に示す1)

Table 1 虚血性大腸炎の診断基準
Table 1 虚血性大腸炎の診断基準

突然強い腹痛が起こり,続いて下痢が起こり徐々に血性下痢となってくるという特徴的な臨床症状にて本症を疑い,緊急内視鏡にて診断するのが一般的な診断の流れである.

 下行結腸,S状結腸に好発し区域性病変を示し,中心部が最も強い所見を呈する.典型的な急性期の内視鏡像は縦走する白苔と周囲の発赤である(Fig. 1)2)

FIg. 1 虚血性大腸炎急性期の典型的内視鏡像.縦走するやや盛り上がった白苔と周囲のうろこ模様がみられる.
FIg. 1 虚血性大腸炎急性期の典型的内視鏡像.縦走するやや盛り上がった白苔と周囲のうろこ模様がみられる.

白苔は盛り上がり,偽膜様であるが,多くはびらんであり短期間に軽快することがほとんどである.組織では粘膜上皮の変性,脱落,壊死がみられ,腺管の立ち枯れ像は虚血性大腸炎の特徴的な像である.発赤は白い線で区画され,うろこ模様と呼ばれるが,本症に特徴的な所見である.組織では間質の浮腫と粘膜内出血であり腺管の変化はみられない.暗赤色の粘膜が認められる場合は(Fig. 2),組織学的には出血壊死であり,虚血の程度は重篤で狭窄型や壊死型の可能性があり,慎重な対応が必要である.慢性期では狭窄型の場合は管状狭窄や縦走潰瘍瘢痕を呈する.