虚血性小腸炎は,小腸の血流障害に起因する小腸病変である.虚血性大腸炎よりも発生頻度が低いのは,小腸の側副血行路が豊富であるためと考えられている1).発症には血管側因子と腸管側因子が複雑に絡み合っており,前者として腸間膜動静脈の微小な塞栓や動脈炎,血圧低下による血流不足,薬剤などが,後者として腸管内圧上昇などが挙げられる2).
腹痛,嘔吐で発症することが多く下血や血便はまれである.ただし,症状は罹患範囲や虚血の程度,側副血行路とも関連する1)3).発症直後には腸管浮腫による拇指圧痕像と皺襞肥大を認める.一方,治癒期の病態は虚血性大腸炎と同様に一過性型と狭窄型に大別されるが,小腸では狭窄型が圧倒的に多く通過障害を来す.狭窄型の病理学的特徴としては求心性の狭窄,境界明瞭な全周性区域性潰瘍,腸管の壁肥厚などが挙げられ4),X線・内視鏡検査では,全周性潰瘍による管状狭窄,口側腸管の拡張,凹凸不整な顆粒状粘膜などがみられる(Fig. 1, 2).