消化管の血管性病変(血管奇形・腫瘍)は,発生部位により (1) 動脈性,(2) 動静脈吻合または毛細血管性,(3) 静脈性に分けられる1).
(1) にはDieulafoy病変や動脈瘤,(2) にはangiodysplasia/angi(o)ectasia,遺伝性出血性末梢血管拡張症〔hereditary hemorrhagic telangiectasia(Rendu-Osler-Weber病)〕,
胃前庭部毛細血管拡張症〔GAVE(gastric antral vascular ectasia)〕,動静脈奇形〔AVM(arteriovenous malformation)〕,
(3) には血管腫,青色ゴムまり様母斑症候群(blue rubber bleb nevus syndrome),phlebectasiaがある.
angiodysplasia/angi(o)ectasia(Moore分類2)type 1 AVM) (Fig. 1)
粘膜固有層,粘膜下層の毛細血管(動静脈吻合)が拡張した数mmから1cm大の血管性病変である.
用語については,国際疾病・傷害・死因統計分類ICD-10に採用されているangiodysplasiaが国際的に最も頻用されているが,
世界消化器内視鏡学会のMST(minimal standard terminology)3.0にはangioectasiaの用語が採用されている.
angiodysplasia/angi(o)ectasiaは全消化管に発生しうる.
胃においては上部消化管出血の原因の5%未満,大腸出血の5%前後を占め,
小腸出血においては近年開発されたカプセル内視鏡,バルーン内視鏡により小腸出血の主要な原因の1つであることが判明された(30%前後).
大腸においては管腔が広く,内圧が高い右側結腸に多いとされ,小腸においては十二指腸,上部空腸に好発する.
発生には局所循環障害に反応する自律神経を介する血管平滑筋の弛緩,腸管の平滑筋収縮と内圧上昇に伴う静脈還流の閉塞などで,
前毛細血管括約筋が慢性的に障害され動静脈吻合が生じるという説が支持されている.
出血性angiodysplasiaは慢性腎不全,心臓弁膜症・心不全,門脈圧亢進症などの基礎疾患に合併する頻度が高い.
angiodysplasiaは同時性,異時性に多発している場合が多く,1か所治療を行ってもその後の経過で他部位より出血することがある.
Rendu-Osler-Weber病(Moore分類2)type 3 AVM)
鼻出血,内臓(肺,肝臓,脳,脊髄,消化管)の動静脈瘻(動静脈奇形),皮膚・粘膜の毛細血管拡張を有する常染色体優性遺伝性疾患である.
angiodysplasia/angi(o)ectasiaとRendu-Osler-Weber病の治療は内視鏡下焼灼術が有効である.
AVM(Moore分類2)type 2 AVM) (Fig. 2)
50歳以前に発症し,おそらく先天的なもので,小腸に最も高頻度に認められる.
漿膜面からでも視認可能と言われるほど大きく,治療は外科切除が原則であるが,動脈塞栓術が有効なこともある.