血管炎とは全身の様々な血管壁に炎症を来す病変で,
血管炎を主病変とする原発性血管炎と,他疾患に血管炎を伴う二次性血管炎がある1).
このうち,原発性血管炎による症候群を血管炎症候群と呼ぶ1).
Chapel Hill Consensus Confererence(CHCC)で,障害を受ける血管の太さと抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody ; ANCA)の有無で
10疾患〔大型血管炎として側頭動脈炎,高安動脈炎,中型血管炎として結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa ; PN),川崎病,細小血管炎としてWegener肉芽症,
Churg-Strauss症候群,顕微鏡的多発動脈炎,Schönlein-Henoch紫斑病,本態性クリオグロブリン症,白血球破砕性血管炎〕が分類された1).
このうち,PN・顕微鏡的多発動脈炎,Churg-Strauss症候群,Schönlein-Henoch紫斑病が高頻度に消化管病変を伴う2)3).
これらの疾患に共通する消化管病変の特徴は血管炎に起因する多発性のびらんや潰瘍で,時に穿孔を来す症例もみられる2)3).
診断には患者の病歴や症状・臨床データとともに生検所見が極めて重要である2)3).
PN3)4)は筋型動脈から細動脈,毛細血管に壊死性血管炎を認める(Fig. 1a).
筋型動脈に発症するPNを古典的PN,細動脈以下の血管に発症するPNを顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis ; MPA)と呼ぶ.
MPAではMPO(myeloperoxidase)-ANCA〔P(perinuclear)-ANCA〕陽性が特徴的である.
PNやMPAの内視鏡所見は胃,十二指腸では類円形潰瘍で,通常の消化管潰瘍と異なり抗潰瘍剤に対して難治性であることが多く,多発することもある.
小腸,大腸では不整形で深くて広い潰瘍を認め,穿孔例も多い3)4)
Churg-Strauss症候群(Fig. 1b)とは気管支喘息,好酸球増加,血管炎による症状を来す症候群で,
これらの症状が1つ以上あり,組織に好酸球浸潤を伴う最小血管の肉芽腫性もしくはフィブリノイド壊死性血管炎,あるいは血管外肉芽腫という病理組織像を呈するものを
アレルギー性肉芽腫性血管炎と呼ぶ3)5).
P-ANCA陽性が高率に認められる.
消化器病変は全消化管でみられ,境界明瞭で辺縁に発赤を伴う多発する潰瘍やびらんが多く,時に穿孔する3)5).
Schönlein-Henoch紫斑病(Fig. 1c, d)はIgAが関与する全身性の毛細血管~細動脈の血管炎により