陥凹型胃腺腫 (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)

depressed adenoma of the stomach

現在,胃生検組織診断分類でGroup 3と診断される病変は腺腫と称され1),その肉眼型のほとんどは隆起型である.

そして,胃腺腫内の5~15%程度1)2)の頻度で,

病理組織学的に隆起型胃腺腫と全く同様の異型を呈しながら,肉眼的に陥凹の形態を呈するものがあり,陥凹型胃腺腫と称されている.

しかし,病理学者によっては,このような陥凹型病変自体,異型を伴う再生であるのか,

あるいは0-IIc型の高分化腺癌そのものなのかなどが明確でなく,

胃dysplasiaとして通常の胃腺腫とは独立した疾患単位とすべき立場もあり,

いまだその病態は不明な点も多い.

陥凹型胃腺腫の癌化の頻度は5~68.4%1)~3)と,隆起型胃腺腫(2.5~6.9%1)~3))と比較してmalignant potentialが高いとする報告が多いが,

両者間で癌化の危険性に差はないとする報告4)も認められる.

臨床的に陥凹型胃腺腫は0-IIc型早期胃癌との鑑別が重要である.

従来の報告1)~3)によると,通常内視鏡所見では発赤調あるいは褪色調の不整形な陥凹縁を呈し,0-IIc型癌との鑑別が極めて困難とされている.

生検診断でも癌との鑑別が困難なこともあり,したがって,内視鏡的切除による治療的診断を推奨する報告も多い3)

Fig. 1はその1例で,前庭部前壁の軽度から中等度の異型を伴った陥凹型胃腺腫である.

X線検査では中心にinsel様の隆起を伴った不整形な陥凹性病変として,

内視鏡検査では褪色調の明瞭な境界を有する陥凹性病変として観察され,未分化型0-IIc型胃癌との鑑別が極めて困難である.