食道炎症性疾患で最も頻度が高く,日常診療で遭遇することが多い疾患として逆流性食道炎が挙げられる.
ほかには,低頻度で時に診断に難渋する疾患として自己免疫性疾患に伴う食道炎〔Crohn病(Crohn’s disease ; CD),Behcet病(Behcet’s disease ; BD)など〕,
薬剤性や腐食性食道炎,感染性食道炎(カンジダ,ヘルペス,サイトメガロウイルスなど),アレルギー性食道炎(好酸球性食道炎)などが挙げられる.
本稿では,CDやBDなど自己免疫性疾患に伴う食道炎を中心に概説する.
CDにおける食道病変の合併頻度は1.8~13%であり,上部消化管病変がCD進展のリスク因子とも言われている.
内視鏡所見はアフタ~小びらんが多く,多発性で,びまん性あるいは縦列傾向の配列を示すことが多い.
重症例では気管や気管支,肺への瘻孔形成,狭窄などを合併することもある1).
また,大型びらんや潰瘍などの高度病変とCDの病勢との相関も示唆されている.
食道病変の頻度は高くはないが,食道病変からの生検におけるgranulomaの検出率は30%程度である.したがって,診断的な意義は決して低くはない2).
BDに伴う食道病変は,0~11%と報告者によって差がみられるが比較的まれである3).
胸部中部~下部食道に多く,形態は発赤からアフタ様びらん,類円形・打ち抜き潰瘍など多彩な所見を呈し,個数にも一定の傾向はない.
また,穿孔,瘻孔形成や管腔狭窄を来した症例も報告されている.